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besself

ベッセル アナログ フィルターの設計

説明

[b,a] = besself(n,Wo) は、n 次ローパス アナログ ベッセル フィルターの伝達関数係数を返します。ここで、Wo はフィルターの群遅延が近似的に定数になる角周波数です。n の値が大きくなるに従って、定数が Wo を上限としてより良く近似される群遅延が生成されます。関数 besself は、デジタル ベッセル フィルターの設計をサポートしません。

[z,p,k] = besself(___) はローパスのアナログ ベッセル フィルターを設計し、その零点、極、およびゲインを返します。

[A,B,C,D] = besself(___) はアナログ ベッセル フィルターを設計し、その状態空間表現を指定する行列を返します。

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最大 104 ラジアン/秒の定数近似群遅延を持つ 5 次のアナログ ローパス ベッセル フィルターを設計します。freqs を使用してフィルターの振幅応答および位相応答をプロットします。

wc = 10000;
[b,a] = besself(5,wc);
freqs(b,a)

Figure contains 2 axes objects. Axes object 1 with xlabel Frequency (rad/s), ylabel Phase (degrees) contains an object of type line. Axes object 2 with xlabel Frequency (rad/s), ylabel Magnitude contains an object of type line.

フィルターの群遅延応答を、アンラップされた位相応答の微分の負として計算します。カットオフ周波数までの範囲で近似的に定数であることを検証するために群遅延をプロットします。

[h,w] = freqs(b,a);
grpdel = -diff(unwrap(angle(h)))./diff(w);

clf
loglog(w(2:end),grpdel)
xlabel('Frequency (rad/s)')
ylabel('Group delay (s)')
xline(wc)
grid

Figure contains an axes object. The axes object with xlabel Frequency (rad/s), ylabel Group delay (s) contains 2 objects of type line, constantline.

カットオフ周波数 2 GHz をもつ 5 次のアナログ バタワース ローパス フィルターを設計します。2π 倍にして周波数を秒あたりのラジアン単位に変換します。4096 点でのフィルターの周波数応答を計算します。

n = 5;
fc = 2e9;

[zb,pb,kb] = butter(n,2*pi*fc,"s");
[bb,ab] = zp2tf(zb,pb,kb);
[hb,wb] = freqs(bb,ab,4096);

同じエッジ周波数と通過帯域リップル 3 dB をもつ 5 次のチェビシェフ I 型フィルターを設計します。その周波数応答を計算します。

[z1,p1,k1] = cheby1(n,3,2*pi*fc,"s");
[b1,a1] = zp2tf(z1,p1,k1);
[h1,w1] = freqs(b1,a1,4096);

同じエッジ周波数と阻止帯域の減衰量 30 dB をもつ 5 次のチェビシェフ II 型フィルターを設計します。その周波数応答を計算します。

[z2,p2,k2] = cheby2(n,30,2*pi*fc,"s");
[b2,a2] = zp2tf(z2,p2,k2);
[h2,w2] = freqs(b2,a2,4096);

同じエッジ周波数、通過帯域リップル 3 dB および阻止帯域の減衰量 30 dB をもつ 5 次の楕円フィルターを設計します。その周波数応答を計算します。

[ze,pe,ke] = ellip(n,3,30,2*pi*fc,"s");
[be,ae] = zp2tf(ze,pe,ke);
[he,we] = freqs(be,ae,4096);

同じエッジ周波数をもつ 5 次のベッセル フィルターを設計します。その周波数応答を計算します。

[zf,pf,kf] = besself(n,2*pi*fc);
[bf,af] = zp2tf(zf,pf,kf);
[hf,wf] = freqs(bf,af,4096);

減衰をデシベルでプロットします。周波数をギガヘルツで表します。フィルターを比較します。

plot([wb w1 w2 we wf]/(2e9*pi), ...
    mag2db(abs([hb h1 h2 he hf])))
axis([0 5 -45 5])
grid
xlabel("Frequency (GHz)")
ylabel("Attenuation (dB)")
legend(["butter" "cheby1" "cheby2" "ellip" "besself"])

Figure contains an axes object. The axes object with xlabel Frequency (GHz), ylabel Attenuation (dB) contains 5 objects of type line. These objects represent butter, cheby1, cheby2, ellip, besself.

バタワース フィルターおよびチェビシェフ II 型フィルターには平坦な通過帯域と広い遷移帯域幅があります。チェビシェフ I 型フィルターおよび楕円フィルターは速くロールオフしますが、通過帯域リップルがあります。チェビシェフ II 型設計関数に対する周波数入力は、通過帯域の末尾ではなく阻止帯域の始点を設定します。ベッセル フィルターは、通過帯域に沿って定数近似群遅延をもちます。

入力引数

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フィルター次数。整数スカラーで指定します。バンドパスおよびバンドストップの設計では、n がフィルター次数の 1/2 を表します。

データ型: double

カットオフ周波数。スカラーまたは 2 要素ベクトルとして指定します。カットオフ周波数は、フィルターの群遅延が近似的に定数になる周波数範囲の上限および下限です。カットオフ周波数は必ずラジアン/秒で表示され、任意の正の値をとることができます。

  • Wo がスカラーの場合、besself は、カットオフ周波数 Wo をもつローパス フィルターまたはハイパス フィルターを設計します。

  • Wo が 2 要素ベクトル [w1 w2] (ここで、w1 < w2) の場合、besself は低域カットオフ周波数 w1 および高域カットオフ周波数 w2 をもつバンドパス フィルターまたはバンドストップ フィルターを設計します。

データ型: double

出力引数

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フィルターの伝達関数の係数。ローパス フィルターおよびハイパス フィルターの場合は長さ n + 1 の行ベクトルとして、バンドパス フィルターおよびバンドストップ フィルターの場合は長さ 2n + 1 の行ベクトルとして返されます。ba によるこの伝達関数式は次になります。

H(s)=B(s)A(s)=b(1)sn+b(2)sn1++b(n+1)a(1)sn+a(2)sn1++a(n+1).

データ型: double

フィルターのゼロ、極、ゲイン。長さ n (バンドパス設計とバンドストップ設計の場合は 2n) およびスカラーの 2 つの列ベクトルとして返されます。zp および k によるこの伝達関数式は次になります。

H(s)=k(sz(1))(sz(2))(sz(n))(sp(1))(sp(2))(sp(n)).

データ型: double

フィルターの状態空間表現。行列として返されます。ローパス設計とハイパス設計の場合、m = n で、バンドパス フィルターとバンドストップ フィルターの場合に m = 2n ならば、A は m × m で、B は m × 1、C は 1 × m、D は 1 × 1 となります。

状態空間の行列は状態ベクトル x、入力 u、出力 y を以下の式により表します。

x˙=Ax+Buy=Cx+Du.

データ型: double

アルゴリズム

関数 besself は、アナログ ベッセル フィルターを設計します。このフィルターは、通過帯域全体でほぼ一定の群遅延をもつという特徴をもち、したがってフィルター処理後の信号波形を通過帯域で保持しています。

ローパス ベッセル フィルターの振幅応答は、ローパス バタワース フィルターと同様、単調減少します。バタワース、チェビシェフ、および楕円の各フィルターに比べ、ベッセル フィルターは最も緩やかなロールオフをもち、減衰仕様を満たすために最も高い次数を必要とします。

高次フィルターにおいては、状態空間形式が数値的に最も正確であり、零点-極-ゲイン形式がこれに続きます。伝達関数係数形式は最も精度が劣り、15 次程度の低さのフィルター次数でも数値的な問題が生じる可能性があります。

besself は、以下の 4 つの手順のアルゴリズムを使用します。

  1. 関数besselapを使用して、ローパス アナログ プロトタイプの極、零点、およびゲインを求めます。

  2. 極、零点、およびゲインを状態空間形式に変換します。

  3. 関数 lp2lp を使用して、連続時間状態空間ローパス フィルターのプロトタイプを、指定されたカットオフ周波数をもつローパス フィルターに変換します。

  4. 必要に応じて、状態空間フィルターを伝達関数、または、零点-極-ゲイン形式に逆変換します。

参照

[1] Parks, Thomas W., and C. Sidney Burrus. Digital Filter Design. New York: John Wiley & Sons, 1987.

バージョン履歴

R2006a より前に導入