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電圧源コンバーター (VSC) を使った高圧直流送電 (HVDC)

はじめに

パワー エレクトロニクス技術の著しい進歩により、自励式の電力用半導体素子における定格の増加、性能の改善が行われ、電圧源コンバーター (VSC: Voltage Sourced Converter) に基づく高圧直流送電 (HVDC: High Voltage Direct Current) が可能になりました。製造業者により提供されている主な 2 つの技術としては、HVDC Light [1] と HVDCplus [2] があります。

この節の例では、自励式の電圧源コンバーターを使った高圧直流送電システム (VSC-HVDC) のモデルについて説明します。この例では、SimPowerSystems™ のブロックを利用して、電圧源コンバーター (VSC) を使った高圧直流送電システム (HVDC) のシミュレーションを行う方法について説明します。ただし、電圧源コンバーターのスイッチング方法としては、単相キャリア (搬送項) 比較方式による、正弦波パルス幅変調方法 (SPWM: Sinusoidal Pulse Width Modulation) を適用します。また、電圧源コンバーターの構成としては、3 レベル、中性点クランプ形 (NPC: Neutral Point Clamped) のものを使用します。このような構成をもつシステムの動特性を調べるために、摂動法を適用します。

電圧源コンバーター (VSC) を使った高圧直流送電 (HVDC) の説明

VSC-HVDC 送電システムの主な特長は、系統連系点 (PCC: Point of Common Coupling) で接続されているそれぞれの AC 電力システムごとに、無効電力潮流と有効電力潮流を独立して制御できることです。他励式 HVDC 送電システムとは異なり、DC リンク電圧の極性は、電力潮流の方向を変えるために反転した DC 電流の極性と同じになります。

この例で説明する HVDC 送電システムの回路モデルは、SimPowerSystems のサンプル モデル power_hvdc_vsc として提供されています。MATLAB® のコマンド ウィンドウから power_hvdc_vsc と入力することで、コマンドを実行できます。このモデルにさらに変更を加えることができるように、このモデルを読み込み、case5.mdl という名前で作業ディレクトリに保存してください。VSC-HVDC 送電システムのモデルに示すこのモデルは、200MVA、+/- 100kV の VSC-HVDC の送電システムを表します。

VSC-HVDC 送電システムのモデル

230kV、2000MVA の AC システム (上図の AC System1 サブシステムと AC System2 サブシステム) は、基本周波数 (50Hz) と第 3 次高調波で 80 度の位相角をもち、ダンピング作用をもつ等価 L-R 回路としてモデル作成されています。VSC コンバーターは、IGBT やダイオードのほぼ理想的なスイッチング デバイスのモデルを利用する、Three-Level-Bridge ブロックでモデル化しています。このデバイスを使用すると IGBT の制御が比較的容易であり、高周波スイッチングに適しているという理由から、IGBT は GTO やサイリスタよりも適切な選択になります。Station 1 (Rectifier) サブシステムと Station 2 (Inverter) サブシステムを開き、それらがどのようにモデル作成されているのかを見てください。

変圧器 (Y 結線 (接地)/Δ 結線) は、最適な電圧に変換する (変圧) ために使用されます。この変圧器の 1 次側と 2 次側の巻線配置は、コンバーターが出力する 3 の倍数の高調波をブロック (遮断) します。変圧器のタップ切換器または磁気飽和は、シミュレーションでは考慮されていません。タップの位置は固定され、変圧器の 1 次側の定格電圧に乗算される実数値で決定されます。この定数値は、およそ 0.85 の変調指数が得られるように設定されます。この例のモデルでは、この定数値は、整流器側では 0.915、インバーター側では 1.015 に設定されています。コンバーターのリアクトルと変圧器の漏れリアクタンスが、AC システムに対して、VSC 出力電圧の位相と大きさのシフトを可能にするので、コンバーターの有効電力と無効電力を制御できます。

AC システムの高調波の仕様を満たすために、AC フィルターは AC システムの主要部分になります。AC フィルターは、変圧器の AC システム側またはコンバーター側に、分流要素として接続できます。高次数の高調波のみがあるので、この分流フィルターはコンバーターの定格に比べて、相対的に小さいものを使用します。このような AC フィルターはハイパス フィルターとしては十分に機能するので、高調波と同調する成分をフィルタリングするような AC フィルターは必要ありません。このモデルでは、AC フィルターの配置としては上記の後者の配置が適用され、コンバーター リアクトル、空芯デバイスは、発電される PWM 波形 (コンバーター バス) から基本周波数成分の波形 (フィルター バス) を取り出します。AC 高調波の発生 [4] には、主に次の 3 つの要素が関わっています。

  • 変調方式 (たとえば、単相または三相キャリア比較方式、空間ベクトル方式など)

  • 周波数インデックス p = 搬送周波数 / 変調波周波数 (例 p = 1350/50 = 27)

  • 変調指数 m = コンバーターの基本周波数成分の出力電圧 / 両極 (正極と負極) 間の DC 電圧

主要な高調波電圧としては、高調波の次数が p の倍数とその近くの値のものが生成されます。分流 AC フィルターは、合計で 40 Mvar の第 27 次と第 54 次の高調波成分のハイパス フィルターです。AC フィルターの動作を説明するために、Powergui ブロックを使用して、コンバーターの A 相電圧とフィルター バスの A 相電圧の定常状態において、FFT 解析を行います。FFT 解析のシミュレーション結果を、「A 相電圧と FFT 解析: (a) コンバーター バス (b) フィルター バス」に示します。

A 相電圧と FFT 解析: (a) コンバーター バス (b) フィルター バス

リザーバ コンデンサは、VSC 端子の DC 側に接続されています。このリザーバ コンデンサは、システムの動特性と DC 側の電圧リップルに影響します。このリザーバ コンデンサの容量は、時定数 τ で定義されます。この時定数 τ は、リザーバ コンデンサがベース電流 (1kA) で充電されるときに、ベース電圧 (100kV) まで充電するのにかかる時間に相当します。この結果、次のようになります。

τ = C · Zbase = 70e-6 · 100 = 7 ms

with Zbase = 100kV/1 kA

高調波をブロックする DC 側のフィルターは、第 3 次高調波、すなわち、正極と負極の電圧にあるメインの高調波をブロックするように調整されます。コンバーターの電流は、正極と負極それぞれの電圧 [3] においては、比較的大きな第 3 次高調波を生成することが知られています。しかし、正極と負極の電圧を合わせた合計の DC 電圧においては、そうではありません。DC 側の高調波は、(たとえば、グランドされた AC フィルターを通して) DC 側に送られる零相の高調波 (3 の奇数倍) になることもあります。平滑リアクトルは、DC 側の各極端子にそれぞれ直列に接続されています。

DC 側の各極 (正極と負極) 端子の電圧の均衡を保つには、各極端子の電圧の差が 0 になるように制御します。VSC Controller サブシステムの中にある DC Voltage Balance Control サブシステムを参照してください。

整流器とインバーターは、75km ケーブル (2 pi セクション) を介して相互に接続されています。VSC-HVDC 送電システムでは、地下ケーブルを利用するのが一般的です。ブレーカー (Three-Phase Fault ブロック) は、インバーターの AC 側に三相地絡故障を発生させるために使用されます。Three-Phase Programmable Voltage Source ブロックは、Station1 (Rectifier) サブシステムにおいて、電圧低下を発生させるために使用されます。

VSC の制御システム

VSC の制御システムとメイン回路とのインターフェイスの概略図は、電圧源コンバーター (VSC) の制御システムとメインとなるコンバーター回路とのインターフェイスの概略図を示します [3]。

VSC の制御システムとメイン回路とのインターフェイスの概略図

整流器 (コンバーター 1) とインバーター (コンバーター 2) の各コントローラーの設計は同じです。2 つのコントローラーは、それらの間で信号のやり取りはなく、それぞれ独立して動作します。各コンバーター (コンバーター 1、コンバーター 2) は、2 つの自由度をもちます。この例では、これら 2 つの自由度は、以下を制御するために使用されます。

  • Station 1 (Rectifier) サブシステムの有効電力 P と無効電力 Q

  • Station 2 (Inverter) サブシステムの各極 (正極と負極) 端子の電圧 Udc (Udc_p, Udc_n) と無効電力 Q

AC 電圧の制御は、無効電力 Q に代わるものとして利用することが可能です。しかし、このような制御システムを構築するには、この例のモデルに含まれていない制御器を追加しなければなりません。

Simulink® Discrete VSC Controller サブシステムの中にある最上位階層のブロック線図を、Discrete VSC Controller サブシステムの中にある最上位階層のブロック線図に示します。

Discrete VSC Controller サブシステムの中にある最上位階層のブロック線図

詳細を参照するには、VSC Controller サブシステムを開いてください。

上図の各コントローラーのモデルのサンプル時間 (Ts_Control) は 74.06µs です。これは、シミュレーションのサンプル時間 (Ts_Power) の 10 倍です。シミュレーションのサンプル時間 (Ts_Control) は、許容できるシミュレーション精度を与える、PWM キャリア周期の 100 分の 1 (すなわち、0.01/1350s) の値が設定されます。VSC Controller サブシステムの中にある Anti-aliasing Filters サブシステムと Discrete 3-phase PWM Generator ブロックは、基本サンプル時間 (Ts_Power) 7.406µs を使用します。この例のモデルでは、非同期の PWM モードが選択されています。Discrete 3-phase PWM Generator ブロックのブロック パラメーターにおいて、[Mode of operation] の項目で [Un-synchronized] を選択します。

pu 単位の変換された電圧と電流が、Discrete VSC Controller サブシステムに与えられます。

以下で、Discrete VSC Controller サブシステムの中にあるモデルについて説明します。Clark Transformations サブシステムは、三相成分 (A 相、B 相、C 相) を空間ベクトルの二相成分の α 相 (実数部) と β 相 (虚数部) に変換します。変換器の一次側で測定される信号 (U と I) は、変圧器の二次側で測定される信号を表す基準座標系と同じ座標系に変換するために、変圧器の接続 (YD11 または YD1) に従い、±pi/6 だけ座標系を回転させます (CLARK YD サブシステムを参照)。

dq transformations サブシステムは、α、β の 2 相成分から、回転基準座標系の直交する 2 軸を表す d 軸、q 軸の成分を計算します。

Signal Calculations サブシステムは、コントローラーが使用するさまざまな物理量を計算し、フィルタリングします。たとえば、これらの物理量としては、有効電力と無効電力、変調指数、DC 電流と電圧などです。

PLL サブシステム

PLL (PLL: Phase Locked Loop) ブロックはシステムの周波数を測定し、dq Transformations ブロックに対して、位相同期角度 Θ (より正確には [sin(Θ)、cos(Θ)]) を与えます。定常状態では、sin(Θ) は、PCC 電圧 (Uabc) の α 相成分と A 相成分の基本波 (正相) を表す位相と同調します。

Outer Active and Reactive Power and Voltage Loop サブシステム

Outer Active and Reactive Power and Voltage Loop サブシステムは、有効電力、無効電力、電圧の制御を行うシステムであり、Inner Current Loop サブシステムの入力となるコンバーターの指令電流ベクトル (Iref_dq) を計算する制御システムも、前者のサブシステムの中に含んだ形で構成されます。制御モードでは、"d" 軸電流では、系統連系点 (以下、PCC) での有効電力潮流またはコンバーターの各極端子の DC 電圧を制御し、"q" 軸電流では、PCC での無効電力潮流を制御します。q 軸電流制御の中に、PCC での AC 電圧制御モードを追加することもできます。Outer Active and Reactive Power and Voltage Loop サブシステムの主な機能を以下に説明します。

Reactive Power Control サブシステムは、速度応答を向上させるために、PI 制御をフィードフォワード制御と組み合わせたものです。積分動作によるワインドアップを回避するために、以下のような状況の場合、制御器の偏差をゼロにリセットします。たとえば、測定される PCC の電圧がある定数値よりも小さい場合 (つまり、AC 摂動の期間)、制御器の出力が制限される場合、偏差の限界値が正の符号をもち、積分器の入力にフィードバックする場合などです。AC Voltage Control Override サブシステムは、2 つの PI 制御器を利用し、安全な範囲内で PCC の AC 電圧を維持するために、安全な範囲外では、無効電力制御器 (Reactive_Power_Contrl サブシステム) の動作を無効にします。特に定常状態は、安全な範囲内にあります。

Active Power Control サブシステムは、Reactive Power Control サブシステムに似ています。制御のブロックが解除されると、Ramping ブロックは、あらかじめ調整された割合で、有効電力の指令値を目標値に向けてランプ状に変化させます。コンバーターがブロックされると、そのランプ状に変化する値は 0 にリセットされます。DC Voltage Control Override サブシステムは、2 つの PI 制御器を利用し、安全な範囲内で DC 電圧を維持するために、安全な範囲外では、有効電力制御器 (Active_Power_Control サブシステム) の動作を無効にします。特に、DC 電圧を制御しているステーションの AC システムの摂動中は、安全な範囲内にあります。

DC Voltage Control サブシステムは、PI 制御器を使用します。Active Power Control サブシステムの動作が無効化されるときに、この DC Voltage Control サブシステムの動作は有効化されます。ブロックの出力は、コンバーターの電流ベクトルの d 軸成分の指令値であり、Current Reference Limitation ブロックの入力になります。

Current Reference Calculation ブロックは、フィルター バスで測定される (空間ベクトル) 電圧に応じて、P と Q の制御器で計算される有効電力と無効電力の指令値を指令電流に変換します。指令電流は、指令電力を電圧 (プリセットの電圧最小値があらかじめ設定されている) で除算することで計算されます。

指令電流ベクトルは、Current Reference Limitation サブシステムにより、許容可能な最大値に制限されます。この値は装置に依存します。電力制御モードでは、ある制限が課されたときに、同じスケーリングが有効電力と無効電力の指令値に適用されます。DC 電圧制御モードでは、電圧を効率的に制御するために、制限が課されるときに有効電力を優先するようにスケーリングが適用されます。

Inner Current Loop サブシステム

Inner Current Loop サブシステムの主な機能を、下記に説明します。

AC_Current_Control サブシステムは、負荷の変化や外乱があったときに、電流の制御を迅速に達成するフィード フォワード制御を使って、指令電流ベクトル (d 軸電流、q 軸電流) に追従させるような制御を行います。たとえば、基準を超えないような短絡故障が、外乱になります。[3] [5] [6] を参照してください。基本的にこの制御では、U と PWM-VSC 電圧間のインピーダンスを流れる電流が原因で発生する電圧低下を追加することによって、電圧ベクトル U_dq を得たり、コンバーター電圧がどのような値でなければならないかを計算したりします。VSC の電流の動特性を表す状態方程式が使用されます。ここで、AC フィルターを無視することで近似が行われます。d 軸電流と q 軸電流は、2 つの独立した 1 次のプラント モデルが得られるように、それぞれ分けて表現されます。コンバーター電流の比例-積分形 (PI) のフィードバック制御は、定常状態での誤差を 0 に減らすために使用されます。AC_Current_Control サブシステムの出力は、制限されていない指令電圧ベクトル Vref_dq_tmp です。

Reference Voltage Conditioning サブシステムは、実際の DC 電圧と基本となるブリッジ位相電圧の理論上の最大ピーク値を、DC 電圧と関連させて考慮することで、最適化された新たな指令電圧ベクトルを生成します。このモデル (キャリア比較方式、PWM 制御、3 レベル中性点クランプ形 (NPC)) では、最大の基本ピーク位相電圧と最大の DC 電圧 (つまり、変調指数 1) の比は、 = 0.816 です。変圧器の 2 次側の母線で、基準電圧として 100kV を選択し、基準の最大の DC 電圧として 200kV を選択すると、基準の変調指数は 0.816 になります。理論上は、変調指数が 1 の場合、コンバーターは 1/0.816 つまり 1.23 pu まで生成できます。この電圧余裕は、容量性のコンバーターの電流 (すなわち、AC システムへの無効電力潮流) を発電するために重要です。

Reference_Voltage_Limitation サブシステムは、過変調が要求されないので、基準電圧ベクトルの大きさを 1.0 に制限します。

dq0 to abc サブシステムと Inverse_Clark サブシステムは、PWM への三相指令電圧を生成するために必要です。

DC Voltage Balance Control サブシステム

DC Voltage Balance Control サブシステムは、有効化または無効化することができます。DC 側の電圧差 (正極と負極の電圧差) は、定常状態での 3 レベル ブリッジの DC 側の均衡が保たれる (つまり、正極と負極の電圧が等しくなる) ように制御されます。各極の電圧間の小さなずれは、有効/無効成分のコンバーターの電流の変化時に起こることがあります。あるいは、パルス幅変調されたブリッジ電圧がかかる場合の精度が不足することで生じる、非線形性が原因で起こることもあります。さらに、各極の電圧間のずれは、回路のインピーダンスに固有の不均衡が原因で起こることもあります。

DC 中性点電流 Id0 は、DC 電圧の正極の電圧 Ud1 と負極の電圧 Ud2 の差 Ud0 を決めます。「3 レベルブリッジの DC 電圧と電流」を参照してください。

3 レベルブリッジの DC 電圧と電流

各極 (正極と負極) のスイッチの導電時間を変化させることによって、DC 中性点電流 Id0 の平均を変化させて、電圧の差 Ud0 を制御することができます。たとえば、負の DC 中性点電流を生成する指令電圧の大きさが減少すると同時に、正の中性点電流を生成する指令電圧の大きさが増加すると、正の差 (Ud0 0) が減少してゼロになります。これは、正弦波の基準電圧に対して、オフセット成分を追加することにより行われます。その結果、ブリッジ電圧が歪みます。電圧が歪む影響を制限するために、制御が遅くなる必要があります。最後に、パフォーマンスを改善するために、DC 電圧を制御するステーションにおいて、この DC Voltage Balance Control サブシステムの機能が有効になることが必要です。

動特性

この節では、この例の直流送電システムの動特性を、シミュレーションを行うことで確認します。シミュレーションすることで、以下のことが観測できます。

  • 有効電力、無効電力と DC 電圧などを制御する主なコントローラーに、ステップ信号の指令値を入力したときの、直流送電システムの動的な応答

  • AC システムにおけるわずかな摂動 (外乱) や大きな摂動 (故障) から、元の状態に回復するまでの動的な応答

これらやその他の結果を得るための手順の詳細は、この例のモデル case5.mdl の中にある Model Information ブロックを参照してください。

システムの起動 - 定常状態とステップ応答

Station 1 (Rectifier) サブシステムの起動と有効電力 P と無効電力 Q のステップ応答

範囲内の主な信号の波形を以下に示します。

Station 2 (Inverter) サブシステムの起動と Udc のステップ応答

DC 電圧を制御するステーション 2 のコンバーターは、はじめに t = 0.1 秒でブロックが解除されます。このとき、有効電力を制御するステーション 1 は、t = 0.3 秒でブロックが解除されます。有効電力は 1 pu までゆっくりとランプ状に増加します。およそ t=1.3s で、DC 電圧と有効電力の定常状態に到達します (有効電力 1.0pu (200 kV、200 MW)。両方のコンバーターとも、無効電力潮流を制御して、ステーション 1 ではゼロ値になり、ステーション 2 では 20 Mvar (-0.1 pu) になるようにします。

定常状態に到達した後、t=1.5s でコンバーター 1 に、有効電力の指令値として -0.1pu のステップ信号が入力されます。さらに、その後、t = 2.0 でコンバーター 1 に、無効電力の指令値として -0.1pu のステップ信号が入力されます。ステーション 2 において、t = 2.5 秒に、DC 電圧の指令値として -0.05pu のステップ信号が入力されます。以上のステップ入力により、制御器の動的な応答が観測されます。安定化時間は、およそ 0.3s です。制御系設計では、有効電力と無効電力の応答を分けて考えます。しかし、実際にシミュレーションをしてみて、制御器がどのように相互に影響するかに注目してください。

AC 側の摂動

定常状態の条件から、ステーション 1 とステーション 2 のそれぞれにおいて、わずかな摂動や大きな摂動が加えられます。三相電圧の低下が、はじめにステーション 1 の母線で発生します。すると、システムの回復に従い、三相地絡故障がステーション 2 の母線で発生します。摂動からのシステムの回復は、迅速で安定でなければなりません。Scope ブロックで観測できる主な波形を、以下の 2 つの図に示します。

AC System 1 での電圧ステップ

ステーション 1 において、t = 1.5 秒で 0.14 秒間 (7 サイクル)、AC の電圧ステップ (-0.1 pu) が発生します。この結果から、わずかな摂動からの有効電力と無効電力の偏差は、それぞれ、0.09 pu、0.2 pu よりも小さいことがわかります。回復時間は 0.3s よりも小さく、次の摂動が生じる前に定常状態に到達します。

t=2.1s において、ステーション 2 で 0.12 秒間 (6 サイクル)、大きな摂動 (故障) が発生します。

Station 2 (Inverter) の母線での三相地絡故障

三相地絡故障の期間 (t = 2.1 ~ 2.22 [sec]) には、送電される DC 電力がほぼ停止し、DC 電圧が増加する傾向にあること (1.2pu) に注目してください。これは、DC 側のリザーブ コンデンサが過度に充電されているためです。ステーション 1 の Active_Power_Control サブシステムにおいて、DC Voltage Control Override という特別な機能で、DC 電圧を固定した範囲内に制限しようとします。故障発生後のシステムの回復は迅速で、0. 5 s 以内に回復します。10 Hz 付近で、無効電力に減衰振動が見られます。

参照

[1] Weimers, L. “A New Technology for a Better Environment,” Power Engineering Review, IEEE®, vol. 18, issue 8, Aug. 1998.

[2] Schettler F., Huang H., and Christl N. “HVDC transmission systems using voltage source converters – design and applications,” IEEE Power Engineering Society Summer Meeting, July 2000.

[3] Lindberg, Anders “PWM and control of two and three level high power voltage source converters,” Licentiate thesis, ISSN-1100-1615, TRITA-EHE 9501, The Royal Institute of Technology, Sweden, 1995.

[4] Sadaba, Alonso, O., P. Sanchis Gurpide, J. Lopez Tanerna, I. Munoz Morales, L. Marroyo Palomo, “Voltage Harmonics Generated by 3-Level Converters Using PWM Natural Sampling,” Power Electronics Specialist Conference, 2001, IEEE 32nd Annual, 17–21 June 2001, vol. 3, pp. 1561–1565.

[5] Lu, Weixing, Boon-Teck Ooi, “Optimal Acquisition and Aggregation of Offshore wind Power by Multiterminal Voltage-Source HVDC,” IEEE Trans.Power Delivery, vol. 18, pp.201–206, Jan. 2003.

[6] Sao, K., P.W. Lehn, M.R. Iravani, J.A. Martinez, “A benchmark system for digital time-domain simulation of a pulse-width-modulated D-STATCOM,” IEEE Trans.Power Delivery, vol. 17, pp.1113–1120, Oct. 2002.

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