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マルチボディ モデルの構造

マルチボディ システムは、ジョイントによってつながれ、ギアなどの運動学的拘束により制限を受ける一連のボディです。さまざまなタイプの力とトルクを使って多様なボディを作動させることができ、その結果生じる運動をセンサーで検出できます。Simscape™ Multibody™ のブロックを使用して、それらのコンポーネントを表し、システムの動的応答を解析できます。マルチボディ ダイナミクスのシミュレーションの詳細については、マルチボディ ダイナミクスを参照してください。

モデルの基本的なコンポーネント

Simscape Multibody の 4 節リンク機構の使用例を考えます。このモデルは、MATLAB® コマンド プロンプトで「OpenExample('sm/FourBarExample')​」と入力して開くことができます。モデルは、ジョイント ブロックにより相互接続された固体 (ソリッド ボディ) のサブシステムで構成されています。ジョイント ブロックはボディ間の自由度を定義します。ボディ サブシステムは、基礎となるブロック線図を介して、ボディの固体特性を定義します。

FourBarExample モデルの基本コンポーネント

ボディ サブシステム自体は、Rigid Transform ブロックにより相互接続された Extruded Solid ブロックで構成されています。Extruded Solid ブロックは、ジオメトリ、慣性、色、座標系などの固体特性を提供します。座標系とは、モデルにおける位置情報と向きの情報をすべて符号化する 3 本の軸の組み合わせです。Rigid Transform ブロックは、ボディが必ず適切に組み立てられるように固体の回転と並進を行います。

次の図は、バイナリ リンクのボディ サブシステムの基礎となるブロック線図を示しています。このブロック線図には 3 つの Solid ブロックが含まれ、バイナリ リンクの中央部分と末端部分を表します。2 つの Rigid Transform ブロックによって、末端の固体が、中央にある固体の端近くの適切な位置へと並進します。

ボディ サブシステムのコンポーネント

モデル内の他の一般的なブロックには、次のようなものがあります。

  • World Frame — モデルに慣性基準座標系を追加します。

  • Rigid Transform — ボディと他の座標系を、互いに対し相対的に回転および並進させます。

  • Mechanism Configuration — モデルの重力定数を定義します。

  • Solver Configuration — タイプ、許容誤差、タイム ステップなど、Simscape のローカル ソルバー オプションを設定します。これはモデルで唯一の必須ブロックです。

モデルの作動

ボディまたはジョイントに力またはトルクを適用することで、モデルを作動させることができます。ボディに働く力とトルクを表すために、Simscape Multibody には Forces and Torques ライブラリが備わっています。このライブラリからブロックを追加し、力またはトルクの適用対象とするボディの座標系に接続します。

ブロック機能
External Force and Torqueマルチボディ モデルの外部に由来する一般的な力やトルク
Internal Force2 つの任意の座標系間にかかる一般的な力のペア
Spring and Damper Force2 つの任意の座標系間にかかるバネ-ダンパーの力のペア
Inverse Square Law Force2 つの任意の座標系間で距離の二乗に反比例する関係が成り立つ、一対の力 (例: クーロン静電力)
Gravitational Fieldすべてのボディにかかる質点の引力。ボディと質点自体との距離の関数として表す

次の図は、クランク リンクの座標系に力とトルクを指定するための External Force and Torque ブロックが備わった、4 節リンク機構モデルを示しています。

ジョイントに働く力またはトルクを指定するため、Simscape Multibody では、作動入力をジョイント ブロック内で直接選択できます。それぞれのジョイント プリミティブ (ジョイント ブロックの基本コンポーネント) で、そのプリミティブに固有の作動入力を選択できます。

ジョイントの作動入力には 2 つのタイプがあります。

  • 運動 — 与えられたジョイント プリミティブの、時間によって変化する軌跡を指定します。

  • 力またはトルク — 与えられたジョイント プリミティブに働く、時間によって変化する作動力または作動トルクを指定します。

次の図は、回転ジョイントに作動トルクが働いている 4 節リンク機構モデルを示しています。

動力学的検出

解析や制御設計などを目的として、座標系のペアの間でさまざまな動力学的変数を検出できます。出力の検出には 2 つのタイプがあります。

  • 運動 — Simscape Multibody の 2 つの座標系間で、相対的な位置、速度、または加速度を計算して出力します。ジョイント ブロックの検出機能を使用してジョイント座標系間で、あるいは Transform Sensor ブロックを使用して任意の座標系間で運動を検出できます。

  • 力またはトルク — Simscape Multibody の 2 つの座標系間に働く力とトルクを計算して出力します。特定の Forces and Torques ブロック (Inverse Square Law Force ブロックなど) の間で、またはジョイント ブロックの端子の座標系間で、力やトルクを検出できます。

ジョイント ブロックでは、それぞれの端子の座標系間で以下を含むさまざまなタイプの力やトルクを検出できます。

  • 特定のジョイント プリミティブに働く作動力または作動トルク。

  • ジョイント全体に働き、ジョイントの自由度に対し法線方向の運動を妨げる拘束力および拘束トルク。

  • ジョイント全体に働き、拘束とジョイント プリミティブ作動への寄与を含む、総合的な力とトルク。

次の図は、カプラー リンク座標系とワールド座標系間で軌跡の座標検出を行う Transform Sensor ブロックをもつ、4 節リンク機構のモデルを示しています。

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