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風力発電プラント - DFIG 詳細モデル

この例では、風力タービンで駆動する二重供給誘導発電機 (DFIG) の詳細モデルを使用した、9 MW 風力発電プラントを示します。

Richard Gagnon (Hydro-Quebec)

1. DFIG のシミュレーション方法

電力網に接続された VSC ベースのエネルギー変換システムをモデル化するため、表す周波数の範囲によって、SimPowerSystems™ では現在 3 つのシミュレーション方法を利用できます。

この例で示されるような "詳細モデル (離散)"。詳細モデルには、パワー エレクトロニクス IGBT コンバーターの詳細表現が含まれています。この例で使用される 1620 Hz と 2700 Hz のスイッチング周波数で受け入れ可能な精度を達成するために、モデルは比較的小さなタイム ステップ (5 マイクロ秒) で離散化しなければなりません。このモデルは、比較的短期間 (一般的には数百ミリ秒~ 1 秒) の高調波および制御システムの動特性の観察に適しています。

Renewable Energy examples ライブラリの power_wind_dfig_avg モデルで示されるような "平均モデル (離散)"。このタイプのモデルにおいて、IGBT 電圧源コンバーター (VSC) は、スイッチング周波数の 1 サイクル全体で平均した AC 電圧を生成する等価な電圧源によって表されます。このモデルでは高調波は表現されませんが、制御システムと電力システムの相互作用から生じるダイナミクスは保持されます。このモデルでは、はるかに大きなタイム ステップを使用できるので (一般的には 50 マイクロ秒)、数秒間のシミュレーションが可能になります。

Renewable Energy examples ライブラリの "power_wind_dfig" モデルで示されるような "フェーザ モデル (連続)"。このモデルは、長期 (数十秒から数分) にわたり低周波数の電気機械的振動のシミュレーションを実行するのに適しています。フェーザ シミュレーション法では、正弦波の電圧と電流は、システムの定格周波数 (50 Hz または 60 Hz) でのフェーザ数量 (複素数) に置き換えられます。これは、過渡安定性ソフトウェアで使用されるものと同じ技法です。

2. 説明

9 MW 風力発電プラントは、25 kV の配電システムに接続された 6 つの 1.5 MW 風力タービンで構成されており、30 km の 25 kV フィーダーを通して 120 kV 送電系統に電力を搬送します。

二重供給誘導発電機 (DFIG) を使用する風力タービンは、巻線形回転子誘導発電機と、AC/DC/AC IGBT を利用する PWM コンバーターで構成されています。固定子巻線は 60 Hz グリッドに直接接続されますが、回転子は AC/DC/AC コンバーターから可変周波数で供給されます。DFIG 技術では、タービンの速度を最適化することで低速の風から最大のエネルギーを取り出すことが可能になります。また、突風のときにタービンにかかる機械的なストレスを最小化します。

この例では、風速は 15 m/s で一定に保たれます。制御システムでは、速度を 1.2 pu に保つためにトルク コントローラーを使用します。風力タービンで生成される無効電力は、0 Mvar に制御されます。

"DFIG Wind Turbine" ブロックを右クリックし、[Look Under Mask] を選択して、モデルがどのように作成されているかを確認します。モデルの離散化に使用されるサンプル時間 (Ts=50 マイクロ秒) は、[Model Properties] の初期化機能で設定されます。

"DFIG Wind Turbine" ブロックのメニューを開き、発電機、コンバーター、タービン、動力伝達装置および制御システムのデータを確認します。[Display] メニューで [Turbine data for 1 wind turbine] を選択し、[Display wind turbine power characteristics] をオンにして [Apply] をクリックします。タービンの Cp 曲線が Figure 1 に表示されます。タービンの電力、先端速度比 lambda および Cp の値は、風速の関数として Figure 2 に表示されます。15 m/s の風速に対し、タービンの出力電力は定格電力の 1 pu、ピッチ角は 8.7°、発電機速度は 1.2 pu です。

3. シミュレーション

この例では、DFIG の定常状態での動作と、120 kV システムでの遠隔故障の結果生ずる電圧低下に対する動的応答を観察します。電圧源をモデル化した "120 kV" ブロックを開き、6 サイクル 0.5 pu の電圧低下が t=0.03 秒にプログラムされていることを確認します。

シミュレーションを開始します。電圧と電流の波形を Scope で観察します。シミュレーションの開始に際して、初期状態の諸変数を含む変数 "xInitial" が ([Model Properties] で指定される "power_wind_dfig_avg_xinit.mat" ファイルから) 自動的に読み込まれるため、シミュレーションは定常状態で開始されます。

はじめに、DFIG 風力発電プラントは 9 MW を発電します。これに対応するタービン速度は、発電機同期速度の 1.2 pu です。DC 電圧は 1150 V に制御され、無効電力は 0 Mvar に保たれます。t=0.03 秒で、正相電圧が突然 0.5 p.u. に落ち、DC 母線電圧と DFIG 出力電力に振動が生じます。電圧低下の間、制御システムは DC 電圧と無効電力を指令値 (1150 V、0 Mvar) に制御しようと試みます。システムはおよそ 4 サイクルで回復します。

4. 初期条件の再生成

この例は、シミュレーションが定常状態で開始されるようにすべて初期化された状態でセットアップされています。そうしないと、風力タービン モデルの電気機械的部分の長い時定数と、比較的動作の遅い制御器のため、定常状態に達するまで数十秒待機しなければなりません。初期条件は、"power_wind_dfig_det.mat" ファイルに保存されています。シミュレーションを開始すると、InitFcn コールバック ([Model Properties]、[Callbacks] にある) が、この .mat ファイルの内容 ([Simulation]、[Configuration Parameters] メニューの [Initial state] パラメーターで指定される変数 "xInitial") をワークスペースに自動的に読み込みます。

このモデルを変更するか、電力成分のパラメーター値を変更すると、変数 "xInitial" に保存された初期条件は無効になり、Simulink によりエラー メッセージが表示されます。変更したモデルの初期条件を再生成するには、以下に示した手順に従います。

  1. [シミュレーション]、[コンフィギュレーション パラメーター] メニューで、[初期状態] をオフにします。

  2. 120 kV 三相電圧源のメニューで [Time variation of] パラメーターを [none] に設定して、電源電圧ステップを無効にします。

  3. 定常状態に達するのに必要な時間を短縮するため、タービン発電機グループの慣性を一時的に減少させる必要があります。DFIG Wind Turbine のメニューを開き、[Drive train data] および [Generator data] で、慣性定数 H を 10 で除算します。

  4. シミュレーション終了時間を 5 秒に変更します。60 Hz 電圧源位相角と位相のそろった初期条件を生成するには、終了時間は 60 Hz サイクルの整数でなければなりません。

  5. シミュレーション モードを "ノーマル" から "アクセラレータ" に変更します。

  6. シミュレーションを開始します。シミュレーションが完了したら、Scope ブロックに表示された波形を観察することで、定常状態に到達したかどうかを確認します。最終状態は、時間と共に "xFinal" 構造体に保存され、次回のシミュレーションの初期状態として使用できます。次の 2 つのコマンドを実行すると、これら最終状態が "xInitial" にコピーされ、この変数が新しいファイル (myModel_init.mat) に保存されます。 * >> xInitial=xFinal; * >> save myModel_init xInitial

  7. [File]、[Model Properties]、[Callbacks]、[InitFcn] ウィンドウで、初期化コマンドの最初の行を "load myModel_init" で置き換えます。次にこのモデルでシミュレーションを開始する場合、myModel_init.mat ファイルに保存されている変数 xInitial がワークスペースに読み込まれます。

  8. [シミュレーション]、[コンフィギュレーション パラメーター] メニューで、[初期状態] をオンにします。

  9. [Wind Turbine Generator] および [Drive train data] で、慣性定数 H を元の値にリセットします。

  10. シミュレーションを開始し、モデルが定常状態で開始したことを確認します。

  11. 120 kV 三相電圧源のメニューで、[Time variation of] パラメーターを [Amplitude] に戻します。

  12. シミュレーション終了時間とシミュレーション モードを元の値に戻します (0.2 秒とノーマル)。

  13. モデルを保存します。

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