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むだ時間をもつモデル

むだ時間を含むモデルの作成方法。

むだ時間のモデリング

次のモデル プロパティを使用して、線形システムでむだ時間を表します。

  • InputDelayOutputDelay — システム入力または出力でのむだ時間

  • ioDelayInternalDelay — システムの内部にあるむだ時間

離散時間モデルでは、これらのプロパティは、サンプル時間の整数倍として表現される遅延を表す整数値に制限されます。サンプル時間の小数部分の倍数である遅延のある離散時間モデルを近似するには、thiran を使用します。

1 次モデルにむだ時間を付加したモデル

この例は、tfInputDelay プロパティまたは OutputDelay プロパティを使用して 1 次モデルにむだ時間を付加したモデルを作成する方法を示します。

次の 1 次伝達関数を 2.1 秒のむだ時間で作成するには、

次のように入力します。

G = tf(1,[1 10],'InputDelay',2.1)

ここで、InputDelay は伝達関数の入力時の遅延です。

    ヒント:   InputDelay は、tf のときと同様に zpk で使用できます。

    G = zpk([],-10,1,'InputDelay',2.1)

SISO 伝達関数の場合、入力の遅延は出力の遅延と同じです。そのため、次のコマンドは同じ伝達関数を作成します。

G = tf(1,[1 10],'OutputDelay',2.1)

むだ時間の値を調査または変更するにはドット表記を使用します。たとえば、次のようにむだ時間を 3.2 に変更します。

 G.OutputDelay = 3.2;

現在の値を確認するには、次のように入力します。

G.OutputDelay

ans =

    3.2000

    ヒント:   むだ時間を伴うモデルを作成するその他の方法は、s で式として遅延付きで伝達関数を指定することです。

    1. 変数 s の伝達関数モデルを作成します。

      s = tf('s');          
    2. s で式として G(s) を指定します。

      G = exp(-2.1*s)/(s+10);

 その他

状態空間モデルでの入力遅延と出力遅延

この例では、ssInputDelay プロパティまたは OutputDelay プロパティを使用して、入力と出力で遅延付きで状態空間モデルを作成する方法を示します。

次の 1 入力 2 出力システムを記述する状態空間モデルを作成します。

このシステムには 1.5 の入力遅延があります。最初の出力は 0.7 の出力遅延があり、2 番目の出力は遅延されません。

    メモ:   SISO 伝達関数と比較すると、入力遅延は状態空間モデルの出力遅延と等価ではありません。状態空間モデルで入力から出力に遅延をシフトするには、モデル状態で時間のシフトを導入することが必要です。たとえば、この例のモデルでは、T = t – 1.5 と X(T) = x(T + 1.5) を定義すると、次の等価なシステムになります。

    すべてのむだ時間は出力側にありますが、新しい状態変数 X はオリジナルの状態変数 x に比べて時間がシフトされています。そのため、状態に物理的意味がある場合、または、既知の状態初期条件がある場合、入力と出力の間で時間をシフトする前に十分に検討してください。

このシステムを作成するには次のようにします。

  1. 状態空間行列を定義します。

    A = -2;
    B = 3;
    C = [1;-1];
    D = 0;
    
  2. モデルを作成します。

    G = ss(A,B,C,D,'InputDelay',1.5,'OutputDelay',[0.7;0])

Gss モデルです。

    ヒント:   delayss を使用して、形式の入力、出力、状態遅延のより一般的な組み合わせで状態空間モデルを作成します。

 その他

MIMO 伝達関数での転送遅延

この例は、各入出力 (I/O) 組に対して異なる転送遅延で MIMO 伝達関数を作成する方法を示します。

MIMO 伝達関数を作成します。

MIMO システムのむだ時間は、この例にあるように、各 I/O 組で特定になります。InputDelayOutputDelay を使用して I/O 固有の転送遅延をモデル化することはできません。その代わりに、ioDelay を使用して各 I/O 組にわたる転送遅延を指定します。

この MIMO 伝達関数を作成するには、次の手順に従います。

  1. 変数 s の伝達関数モデルを作成します。

    s = tf('s');          
  2. 変数 s を使用して、むだ時間なしで H の伝達関数を指定します。

    H = [2/s (s+1)/(s+10); 10 (s-1)/(s+5)];
    
  3. 各 I/O 組の転送遅延に対応する配列値として、HioDelay プロパティを指定します。

    H.ioDelay = [0.1 0.3; 0 0.2];

H は 2 入力 2 出力 tf モデルです。H の各 I/O 組には、tau の対応するエントリによって指定されるむだ時間があります。

むだ時間のある閉フィードバック ループ

この例は、入力、出力、または伝播むだ時間のあるモデルを相互接続するときに内部遅延が発生する方法を示します。

次の制御アーキテクチャのモデルを作成します。

G はプラント モデルであり、これには入力遅延があります。C は比例-積分制御 (PI) コントローラーです。

このシステムの閉ループ応答を表すモデルを作成するには、次の手順に従います。

  1. プラント G とコントローラー C を作成します。

    G = tf(1,[1 10],'InputDelay',2.1); 
    C = pid(0.5,2.3);
    

    C には、0.5 の比例ゲインと 2.3 の積分ゲインがあります。

  2. feedback を使用して、r から y まで閉ループ応答を計算します。

    T = feedback(C*G,1);
    

T におけるむだ時間は、G における入力遅延と同じではありません。むだ時間は閉ループ システムの内部にあるので、ソフトウェアは 2.1 秒の "内部むだ時間" のある ss モデルとして T を返します。

    メモ:   feedback に加えて、任意のシステム相互接続関数 (parallelseries を含む) で内部遅延を生成できます。

T は、近似ではなく、閉ループ応答の正確な表現です。内部遅延値にアクセスするには、次を入力します。

T.InternalDelay

T のステップ プロットは、むだ時間の存在を確認します。

step(T)

    メモ:   stepbodemargin などのほとんどの解析コマンドは、内部遅延のあるモデルをサポートします。

内部むだ時間は TInternalDelay プロパティに格納されます。ドット表記を使用して InternalDelay にアクセスします。たとえば、内部遅延を 3.5 秒に変更するには、次のように入力します。

 T.InternalDelay = 3.5

内部遅延は、モデルの構造に組み込まれているので、その数は変更できません。

 その他

むだ時間のある離散時間伝達関数

この例は、むだ時間を使用して離散時間伝達関数モデルを作成する方法を示します。

離散時間モデルのむだ時間は連続時間モデルと同じ方法で指定します。ただし、離散時間モデルの場合は遅延値はサンプル時間の整数倍にしなければなりません。たとえば、次の 1 次伝達関数を Ts = 0.1  秒のサンプル時間で作成します。

H = tf(2,[1 -0.95],0.1,'InputDelay',25)

InputDelay を 25 に設定すると、25 サンプリング周期の遅延になります。

    ヒント:   サンプル時間の小数部分の倍数である遅延のある離散時間モデルを近似するには、thiran を使用します。

むだ時間近似

多くの制御設計アルゴリズムでは、むだ時間を直接取り扱えません。たとえば根軌跡、LQG、極配置などの手法はむだ時間が存在すると正しく処理されません。一般的な手法は、遅延を近似するオールパス フィルターで置き換えることです。

連続時間モデルでむだ時間を近似するには、pade コマンドを使って パデ近似を計算します。パデ近似は低周波数でのみ有効であり、時間領域近似よりも良い周波数領域近似を提供します。そのため、真の応答と近似の応答を比較し、正しい近似の次数を選択して近似の妥当性を確認することが重要です。

離散時間モデルの場合、absorbDelay を使用して 1/z の因子にむだ時間を変換します。このとき、むだ時間はサンプル時間の整数倍になります。thiran を使用して小数部分のむだ時間を近似します。

 関連する例

連続時間開ループ モデルのむだ時間近似

この例は、pade を使用して連続時間開ループ システムで遅延を近似する方法を示します。

パデ近似は、むだ時間をサポートしていない解析または設計ツールを使用するときに便利です。

  1. サンプル開ループ システムを出力遅延で作成します。

    s = tf('s');
    P = exp(-2.6*s)/(s^2+0.9*s+1);

    P は、むだ時間のある 2 次伝達関数 (tf) オブジェクトです。

  2. P の 1 次パデ近似を計算します。

    Pnd1 = pade(P,1)
    
    Pnd1 =
     
                 -s + 0.7692
      ----------------------------------
      s^3 + 1.669 s^2 + 1.692 s + 0.7692
     
    Continuous-time transfer function.
    

    このコマンドは、1 次近似で P のすべてのむだ時間を置き換えます。そのため、Pnd1 は遅延のない 3 次伝達関数になります。

  3. bodeplot を使用して、元のモデルと近似モデルの周波数応答を比較します。

    h = bodeoptions;
    h.PhaseMatching = 'on';
    bodeplot(P,'-b',Pnd1,'-.r',{0.1,10},h)
    legend('Exact delay','First-Order Pade','Location','SouthWest')

    PPnd1 のゲインは正確に一致します。ただし、Pnd1 の位相は、約 1 ラジアン/秒を超える P の位相から逸脱します。

  4. パデ近似次数を増やすことで、位相近似が良好である周波数帯域が拡張されます。

    Pnd3 = pade(P,3);
    
  5. PPnd1、および Pnd3 の周波数応答を比較します。

    bodeplot(P,'-b',Pnd3,'-.r',Pnd1,':k',{0.1 10},h)
    legend('Exact delay','Third-Order Pade','First-Order Pade',...
           'Location','SouthWest')

    位相近似誤差は、3 次パデ近似を使用することで減少します。

  6. step を使用して、元のシステムと近似システム時間領域応答を比較します。

    step(P,'-b',Pnd3,'-.r',Pnd1,':k')
    legend('Exact delay','Third-Order Pade','First-Order Pade',...
           'Location','Southeast')

    パデ近似の使用によって、初期遷移応答での非最小位相部分 (「逆行」現象) が導入されます。効果は高次の近似では減少されます。

      メモ:   高すぎる近似次数を使用することは、数値の問題になる可能性があり、不安定な極になる可能性があります。そのため、次数 N>10 のパデ近似は回避します。

連続時間閉ループ モデルのむだ時間近似

この例は、pade を使用して内部遅延のある連続時間閉ループ システムで遅延を近似する方法を示します。

パデ近似は、むだ時間をサポートしていない解析または設計ツールを使用するときに便利です。

  1. サンプル連続時間閉ループ システムを内部遅延付きで作成します。

    閉ループ伝達関数のモデル Tclr から y まで構築します。

    s = tf('s');
    G = (s+1)/(s^2+.68*s+1)*exp(-4.2*s);
    C = pid(0.06,0.15,0.006);
    Tcl = feedback(G*C,1);
    

    Tcl の内部遅延を調べます。

    Tcl.InternalDelay
    
    ans =
    
        4.2000
    
  2. Tcl の 1 次パデ近似を計算します。

    Tnd1 = pade(Tcl,1);
    

    Tnd1 は、遅延のない状態空間 (ss) モデルです。

  3. 元のモデルと近似モデルの周波数応答を比較します。

    h = bodeoptions;
    h.PhaseMatching = 'on';
    bodeplot(Tcl,'-b',Tnd1,'-.r',{.1,10},h);
    legend('Exact delay','First-Order Pade','Location','SouthWest');

    ゲインと位相の近似誤差は、1 ラジアン/秒を超えると重大です。

  4. step を使用して Tcl および Tnd1 の時間領域応答を比較します。

    step(Tcl,'-b',Tnd1,'-.r');
    legend('Exact delay','First-Order Pade','Location','SouthEast');

    パデ近似の使用によって、初期遷移応答での非最小位相部分 (「逆行」現象) が導入されます。

  5. パデ近似次数が良好な位相とゲインの近似で周波数を拡張するかどうかを確認するために、パデ近似次数を増やします。

    Tnd3 = pade(Tcl,3);
    
  6. Tcl の 3 次パデ近似の動作を監視します。TclTnd3 の周波数応答を比較します。

    bode(Tcl,'-b',Tnd3,'-.r',Tnd1,'--k',{.1,10},h);
    legend('Exact delay','Third-Order Pade','First-Order Pade',...
           'Location','SouthWest');

    ゲインと位相の近似誤差は、3 次パデ近似を使用するときに減少します。

パデ近似次数を増やすことで、近似が良好である周波数帯域が拡張されます。ただし、高すぎる近似次数は、数値の問題になる可能性があり、不安定な極になる可能性があります。そのため、次数 N>10 のパデ近似は回避します。

 その他

異なる近似次数での異なる遅延の近似

この例は、連続時間開ループ システムで内部および出力遅延を近似させるために、異なるパデ近似次数を指定する方法を示します。

  1. 内部および外部のむだ時間を含むサンプル連続時間開ループ システムを読み込みます。

    load PadeApproximation1 sys;
    

    sys は、内部遅延 3.4 秒と出力遅延 1.5 秒の 2 次連続時間 ss モデルです。

      ヒント:   sys のより多くのプロパティに対して get(sys) を入力します。

  2. pade を使用して、内部遅延の 3 次近似と出力遅延の 1 次近似を計算します。

    P13 = pade(sys,inf,1,3);
    

    sys に続く 3 つの入力引数は、それぞれ sys の入力、出力、および内部遅延の近似次数を指定します。inf は遅延が近似されないことを指定します。出力遅延と内部遅延の近似次数は、それぞれ 1 と 3 です。

    P13 は、遅延のない 6 次連続時間 ss モデルです。

  3. (オプション) 比較のため、出力遅延はそのままにして、sys の内部遅延だけを近似します。

    P3 = pade(sys,inf,inf,3);
    

    P3 は、1.5 秒の出力遅延である 5 次連続時間 ss モデルです。内部遅延は近似され、状態空間行列に吸収されます。

  4. (オプション) 正確なシステムと近似システム sys、P13、P3 の周波数応答を比較しま す。 sys, P13, P3.

    h = bodeoptions;
    h.PhaseMatching = 'on';
    bode(sys,'b-',P13,'r-.',P3,'k--',h,{.01,10});
    legend('Exact Output and Internal Time Delays',...
        'Pade Approximation - First-order Output, ...
         Third-order Internal Delays',...
        'Pade Approximation - Third-order Internal Delay',...
        'location','SouthWest')

離散時間モデルでのむだ時間の 1/z の因数への変換

この例では、absorbDelay を使用して離散時間モデルのむだ時間を 1/z の因子に変換する方法を示します。

離散時間モデルでは、1 サンプリング間隔のむだ時間はモデルの 1/z (z = 0 の極) の因子と等価です。そのため、離散時間モデルの InputDelayOutputDelay、または ioDelay プロパティに格納されたむだ時間は、z = 0 で極として書き直されることによってモデル ダイナミクスに書き直すことができます。ただし、追加の極はシステムの次数を増やします。特に、長いむだ時間では、これは非常に高次のシステムを生み出す可能性があり、長い計算時間や数値誤差を招きます。

離散時間閉ループ モデルでむだ時間を無くす方法を示し、それを行う効果を確認するために、次の閉ループ システムを作成します。

ここで、G は入力遅延のある 1 次離散時間システムであり、C は PI コントローラーです。

G = ss(0.9,0.125,0.08,0,'Ts',0.01,'InputDelay',7);
C = pid(6,90,0,0,'Ts',0.01);
T = feedback(C*G,1);

T の次数と内部遅延を調べます。

order(T)
T.InternalDelay
ans =

     2


ans =

     7

T は、7 つのタイム ステップの内部遅延がある 2 次状態空間モデルです。

absorbDelay を使用して z-7 によって内部遅延を置き換えます。

Tnd = absorbDelay(T);

Tnd の内部遅延を調べます。

Tnd.InternalDelay
ans =

   Empty matrix: 0-by-1

Tnd には内部遅延がなく、Tnd のステップ応答は T のステップ応答と正確に一致します。

step(T,Tnd)

ただし、Tnd は、7 単位遅延をモデルに吸収することによって導入された 7 つの余分な極のために、9 次モデルになります。

order(Tnd)
ans =

     9

離散時間モデルにおける小数部分のむだ時間近似

thiran コマンドを使用して、Thiran オールパス フィルターとしてサンプル時間の小数部分の倍数であるむだ時間を近似します。

tau のむだ時間と Ts のサンプル時間の場合、構文 thiran(tau,Ts) は 2 つの項の積である離散時間伝達関数を作成します。

  • むだ時間の整数部を純粋な線形遅延で表す項、(1/z)NN = ceil(tau/Ts). です。

  • むだ時間の非整数部分 (tau - NTs) を Thiran オールパス フィルターとして近似する項。

パデ近似を離散化しても、連続時間のむだ時間と離散近似間の適切な位相マッチングが保証されるわけではありません。thiran を使用して連続むだ時間の離散時間近似を生成した方が優れた位相マッチングがもたらされます。たとえば次の図は、10.2 秒のむだ時間を 1 秒のサンプル時間で離散化した位相遅延を 3 つの方法で近似したものです。

  • 1 次パデ近似。c2dtustin 法を使用して離散化しています。

  • 11 次パデ近似。c2dtustin 法を使用して離散化しています。

  • 11 次 Thiran フィルター

Thiran フィルターは 10.2 秒の遅延で最も近い近似を生成します。

Thiran フィルターの詳細は、thiran のリファレンス ページを参照してください。

むだ時間のある周波数応答データ (FRD) モデル

この例は、むだ時間の周波数応答データへの吸収が、高い周波数で望まない位相ラッピングを起こす可能性があることを示しています。

むだ時間を含むシステムに対して周波数応答データを収集するときに、むだ時間を位相シフトとして周波数応答に吸収できます。そのほかに、計測した周波数応答からむだ時間を分離できるのであれば、frd モデル オブジェクトの InputDelayOutputDelay、または ioDelay プロパティを使用して遅延を表すことができます。後者の方法は、この例が示すように、より良好な数値結果を提供する可能性があります。

frd モデル fsys は、2 秒の転送遅延を含みます。モデルを MATLAB® ワークスペースに読み込んで、次のコマンドでむだ時間を調査します。

load frddelayexample fsys
fsys.ioDelay

fsys のボード線図は、転送遅延の効果を示します。

bodeplot(fsys)

転送遅延 ioDelay = 2 は、増加する周波数の位相の高速な累積を導入します。

absorbDelay コマンドは、すべてのむだ時間を直接周波数応答に吸収し、その結果、ioDelay = 0 のある frd モデルになります。

fsys2 = absorbDelay(fsys);
fsys2.ioDelay

遅延を表す 2 つの方法を比較することによって、遅延を周波数応答に吸収することが位相ラッピングを発生させることがわかります。

bode(fsys,fsys2)

位相ラッピングは、高周波数または周波数グリッドがスパースである数値の誤差を導入する可能性があります。そのため、システムが e–τsG(s) の形式をとる場合、G(s) 用の周波数応答データを計測し、InputDelayOutputDelay、または ioDelay を使用してむだ時間 τ をモデル化することによって、より良い結果を得られる可能性があります。

 その他

内部遅延

InputDelayOutputDelay、および ioDelay プロパティを使用することによって、転送遅延のあるシンプルな処理をモデル化できます。ただし、これらのプロパティは、遅延のあるフィードバック ループなどのより複雑な状況をモデル化することはできません。InputDelayOutputDelay のプロパティに加えて、状態空間 (ss) モデルには InternalDelay プロパティがあります。このプロパティによって、遅延のあるフィードバック ループを含めて、入力、出力、または転送遅延のあるシステムの相互接続をモデル化できます。InternalDelay プロパティを使用して、遅延を含む任意の線形システムを正確にモデル化して解析できます。内部遅延は以下から生じます。

  • 入力遅延と出力遅延を含む状態空間モデルの連結

  • 遅延信号のフィードバック

  • MIMO tf または zpk モデルの転送遅延から状態空間形式への変換

内部むだ時間を使用して、次のことができます。

  • 連続時間系では、パデ近似で遅延を置き換える必要がないので、近似なしの時間と周波数のシミュレーションを生成できます。連続時間系では、長い遅延を含むシステムの正確な解析ができます。

  • 離散時間系では、遅延は z = 0 の極では置き換えられないので、他のシステム ダイナミクスから遅延を分離し続けることができます。これは、長い遅延のある離散時間システムの時間と周波数のシミュレーションの効率を飛躍的に向上させます。

  • 大部分の Control System Toolbox™ 関数を使用できます。

  • 遅延を含むシステムに対する高度な制御方法をテストできます。たとえば、スミス予測器の正確なモデルを実装してテストできます。「長いむだ時間をもつプロセス制御: スミス予測器長いむだ時間をもつプロセス制御: スミス予測器」の例を参照してください。

内部遅延が必要な理由

この例では、入力、出力、転送遅延が動的システムで発生する可能性のあるすべての遅延のタイプをモデル化するには十分ではない理由を示します。ここでは、次のような 2 秒の遅延を含む簡単なフィードバック ループについて考えます。

閉ループ伝達関数は次のようになります。

分子の遅延の項は出力遅延として表すことができます。ただし、分母の遅延の項ではできません。フィードバック ループ上の遅延の効果をモデル化するには、遅延と通常のダイナミクス間の内部結合を記録するために InternalDelay プロパティが必要です。

通常、行列 A、B、C、および D を一連の内部遅延にまとめて指定して、内部遅延を含む状態空間モデルを直接作成することは行いません。それよりも、そのようなモデルは遅延のあるモデルを相互接続するときに発生します。含まれる遅延の数やモデルの接続方法に制限はありません。フィードバック ループを閉じることで内部遅延を作成する例の詳細は、「むだ時間のある閉フィードバック ループ」を参照してください。

内部遅延のあるモデルの動作

内部遅延を含むモデルを使用する場合は、次の動作に注意してください。

  • モデル相互接続が内部遅延を生じさせるときは、相互接続されているモデルのタイプに関係なく、ソフトウェアは ss モデルを返します。これは ss だけが内部遅延をサポートするためです。

  • フィードバック ループが完全にサポートされています。遅延を含むどのようなシステムにもフィードバック ループを設定できます。

  • 行列 ABC、および D を表示するときは、すべての遅延がゼロに設定されます (ゼロ次のパデ近似が行われます)。この近似は表示用だけに発生し、モデルを使用する計算には発生しません。

    システムによっては、遅延をゼロに設定すると、特異値の代数ループが作成されることがあります。そのため、ゼロ遅延の近似が正しく行われないか、間違って定義されることになります。これらのシステムには、次が当てはまります。

    • sys コマンドを入力すると、sys という名前のシステムの行列のサイズだけが出力される。

    • sys.a コマンドを入力すると、エラーが発生する。

      表示が不完全だったり、エラーが発生したりしても、モデル sys 自体に問題があるという意味ではありません。

内部むだ時間のモデル

状態空間オブジェクトでは、内部遅延を記録するために、一般化された状態空間方程式が使用されます。概念的に、そのようなモデルは、次の 2 つの相互接続した部分から構成されます。

  • 拡張された I/O セットを含む通常の状態空間モデル H(s)

  • 内部遅延のバンク

対応する状態空間方程式は以下のとおりです。

このツールを使用するために、このような内部表現について考える必要はありません。ただし、H または行列 AB1B2,... などを抽出する場合は、次の例のように getDelayModel を使用できます。

P = 5*exp(-3.4*s)/(s+1); 
C = 0.1 * (1 + 1/(5*s));
 T = feedback(ss(P*C),1);  
[H,tau] = getDelayModel(T,'lft'); 
size(H)

H は 2 入力 2 出力モデルで、T は SISO であることに注意してください。逆の操作 (Htau を組み合せて T を作成) は関数 setDelayModel で実行できます。

詳細は、[1][2]を参照してください。

内部むだ時間をサポートする関数

以下のコマンドでは、連続時間システムと離散時間システムの内部遅延がサポートされています。

  • すべての相互接続関数

  • 関数 impulseinitial 以外の時間領域応答関数

  • 関数 norm 以外の周波数領域関数

内部むだ時間をサポートする関数の制限-  次のコマンドでは、連続時間システムと離散時間システムの内部遅延がサポートされていますが、制限がいくつかあります。

  • 「allmargin」「margin」 - 内挿を使用します。したがって、これらのコマンドの正確さは、指定したグリッドの細かさと同じになります。

  • 「pole」「zero」 - すべての遅延をゼロに設定した場合のシステムの極と零点が出力されます。

  • ssdataget - SS モデルが内部遅延を含む場合は、すべての内部遅延がゼロに設定されたシステムの ABCD が出力されます。getDelayModel を使用して内部遅延のあるモデルの内部状態空間表現にアクセスします。

内部むだ時間をサポートしない関数

次のコマンドでは、内部むだ時間がサポートされていません。

参考文献

[1] P. Gahinet and L.F. Shampine, "Software for Modeling and Analysis of Linear Systems with Delays," Proc. American Control Conf., Boston, 2004, pp. 5600-5605

[2] L.F. Shampine and P. Gahinet, Delay-differential-algebraic Equations in Control Theory, Applied Numerical Mathematics, 56 (2006), pp. 574-588

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