Main Content

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

アイ ダイアグラム解析

デジタル通信では、アイ ダイアグラムはノイズがシステム パフォーマンスに与える影響を視覚的に示します。

Eye Diagram ブロックを使用して、信号のアイ ダイアグラムを調査します。

アイ ダイアグラムについて、次の測定値を取得することができます。

  • 振幅測定値

    • アイ振幅

    • アイ クロッシング振幅

    • アイ クロッシング パーセンテージ

    • アイ高さ

    • アイ レベル

    • アイ SNR

    • 品質係数

    • 垂直方向のアイ開口率

  • 時間測定値

    • 確定的ジッター

    • アイ クロッシング時間

    • アイパターン遅延

    • アイ立ち下がり時間

    • アイ立ち上がり時間

    • アイ幅

    • 水平方向のアイ開口率

    • ピーク間ジッター

    • ランダム ジッター

    • RMS ジッター

    • 総ジッター

「測定値」では、アイ ダイアグラム オブジェクトに有効なデータがあると仮定しています。1 つの有効なアイ ダイアグラムには、2 つの明確なアイ クロッシング点と 2 つの明確なアイ レベルがあります。

確定的ジッター、水平方向のアイ開口率、品質係数、ランダム ジッター、および垂直方向のアイ開口率の測定では、デュアルディラック アルゴリズムが使用されます。"ジッター" は、信号のタイミング イベントが、目的とする (理想的な) 発生時刻からどれほど逸脱しているのかを示します [1]。ジッターはデュアルディラック モデルで表現されます。デュアルディラック モデルでは、ジッターは 2 つの要素、確定的ジッター (DJ) とランダム ジッター (RJ) から構成されると想定しています。DJ PDF は、μL における関数と μR における関数の 2 つのデルタ関数で構成されます。RJ PDF は、平均 0、分散 σ のガウス曲線であると想定されます。

"総ジッター (TJ) PDF" は、これら 2 つの PDF の畳み込みであり、分散が σ、平均値が μL と μR の 2 つのガウス曲線で構成されます。

デュアルディラック モデルの詳細については、[5] で説明されています。2 つのディラック関数の振幅が、同じでない場合があります。そのような場合、analyze メソッドは振幅 ρL と ρR を推定します。

振幅測定値

垂直ヒストグラムを使用して、多様な振幅測定値を取得することができます。複素信号の場合、特に指定されない限り、測定は同相成分と直交成分の両方で行われます。

メモ

振幅測定の場合、1 つの垂直ヒストグラムあたり 1 つ以上のビンが 10 ヒットに到達しないと、測定値は取得されません。これは、高い精度を確保するためです。

アイ振幅 (EyeAmplitude)

"アイ振幅" は、2 つの隣り合うアイ レベル間の距離として定義され、単位は AU (振幅単位) です。NRZ 信号の場合、存在するレベルは次の 2 つ、高水準 (図のレベル 1) と低水準 (図のレベル 0) のみです。アイ振幅は、これらの 2 つの値の差です。

アイ クロッシング振幅 (EyeCrossingLevel)

"アイ クロッシング振幅" は、アイ クロッシングが発生する振幅レベルです。測定単位は AU (振幅単位) です。analyze メソッドはこの値をクロッシング時間における垂直ヒストグラムの平均値を使用して計算します [3]。

次の図は、最初のアイ クロッシング時間における垂直ヒストグラムを示します。

アイ クロッシング パーセンテージ (EyeOpeningVer)

"アイ クロッシング パーセンテージ" は、アイ振幅のパーセンテージとしてのアイ クロッシング レベルの位置です。

アイ高さ (EyeHeight)

"アイ高さ" は、2 つの隣り合うアイ レベル間の 3σ 距離として定義され、単位は AU (振幅単位) です。

NRZ 信号の場合、存在するレベルは次の 2 つ、高水準 (図のレベル 1) と低水準 (図のレベル 0) のみです。アイ高さは、2 つの 3σ 点の差です。3σ 点は、PDF の平均値から標準偏差の 3 倍分移動した点として定義されます。

アイ レベル (EyeLevel)

"アイ レベル" は、データ ビットの表現に使用される振幅レベルであり、単位は AU (振幅単位) です。

理想的な NRZ 信号の場合、アイ レベルは +A と –A の 2 つです。analyze メソッドは、EyeDelay 周辺についてウィンドウで垂直ヒストグラムの平均値を推定して、アイ レベルを計算します。これは、アイ クロッシング時間の間の 50% 点でもあります [3]。このウィンドウの幅は、アイ測定設定オブジェクトの EyeLevelBoundary プロパティによって決まります。

analyze メソッドは、アイ レベル境界内にある垂直ヒストグラムすべての平均値を計算します。平均垂直ヒストグラムには、アイ レベルごとに独立した PDF が表示されます。

アイ SNR (EyeSNR)

"アイ S/N 比" は、2 つのアイ レベルの標準偏差の和に対するアイ振幅の割合として定義されます。以下のように表すことができます。

SNR = L1L0σ1+σ0

ここで、L1 と L0 はそれぞれアイ レベル 1 と 0 を表し、σ1 と σ2 はそれぞれアイ レベル 1 と 0 の標準偏差を表します。

NRZ 信号の場合、アイ レベル 1 は高レベル、アイ レベル 0 は低レベルに対応します。

品質係数 (QualityFactor)

analyze メソッドは、"品質係数" をアイ SNR と同じように計算します。ただし、L1 と σ1 の垂直ヒストグラムの平均値と標準偏差値の代わりに、デュアルディラック法により推定された平均値と標準偏差値を使用します。詳細については、[2] のデュアルディラックの節を参照してください。

垂直方向のアイ開口率 (EyeOpeningVer)

"垂直方向のアイ開口率" は、アイ測定設定オブジェクトの BERThreshold プロパティで定義される BER 値に対応する EyeDelay における垂直ヒストグラム上の 2 点間の垂直距離として定義されます。analyze メソッドは、ランダムな要素と確定的な要素を考慮に入れ、デュアルディラック モデルによりこの測定値を計算します [5] (デュアルディラックの節を参照)。アイの開口測定値の一般的な BER 値は 10-12 です。これは、ほぼ 7σ 点に相当します (ガウス分布を想定)。

時間測定値

アイ ダイアグラムの水平ヒストグラムを使用して、さまざまな時間測定値を取得することができます。

メモ

時間測定の場合、1 つの水平ヒストグラムあたり 1 つ以上のビンが 10 ヒットに到達しないと、測定値は取得されません。

確定的ジッター (Deterministic Jitter (JitterDeterministic))

"確定的ジッター" は、ジッターの確定的な成分です。計算にはテール平均値を使用します。これは、以下のようにデュアルディラック法により推定されます [5]。

DJ = μL — μR

ここで、μL と μR は、デュアルディラック アルゴリズムが返す平均値です。

アイ クロッシング時間 (EyeCrossingTime)

アイ クロッシング時間は、基準振幅レベル周辺における各クロッシング点の水平ヒストグラムの平均として計算されます。測定単位は秒です。アイ測定設定オブジェクトの CrossingBandWith プロパティによって定義される領域について、すべての水平 PDF の平均値が計算されます。

この領域は、-Atotal* BW から +Atotal* BW までです。ここで、 Atotal はアイ ダイアグラムの全振幅範囲 (つまり、A total = A max — Amin) であり、BW はクロッシング帯域幅です。

この例では 1 トレースあたり 2 つのシンボルを想定しているので、この領域の平均 PDF は、クロッシング点が 2 つあることを示しています。

メモ

アイ クロッシングの時間測定値が、[-0.5/Fs, 0) 秒間隔内に収まる場合、この時間測定値はアイ ダイアグラムの末尾にラップされます。つまり、測定値は 2*Ts 秒だけラップされます (ここで、Ts はシンボル時間)。複素信号では、同相分岐のクロッシングの時間測定値がラップされて直交ブランチのクロッシングの時間測定値はラップされない場合 (またはこの逆の場合)、analyze メソッドにより警告が表示されます。

タイムラッピングまたは警告を回避するには、アイ ダイアグラム オブジェクトの MeasurementDelay プロパティの現在の値に 1/2 シンボル区間遅延を追加します。この追加遅延により、アイがスコープのほぼ中心に再配置されます。

アイパターン遅延 (EyeDelay)

アイパターン遅延は、アイの中点から時間軸の原点までの距離であり、測定単位は秒です。analyze メソッドはクロッシング時間を使用してこの距離を計算します。対称信号の場合、EyeDelay は最適なサンプリング点でもあります。

アイ立ち下がり時間 (EyeFallTime)

"アイ立ち下がり時間" は、アイ測定設定オブジェクトの AmplitudeThreshold プロパティによって定義される上側のしきい値から下側のしきい値に達するまでの平均時間です。立ち下がり時間は、アイ振幅の 10% ~ 90% から計算されます。

アイ立ち上がり時間 (EyeRiseTime)

"アイ立ち上がり時間" は、アイ測定設定オブジェクトの AmplitudeThreshold プロパティによって定義される下側のしきい値から上側のしきい値に達するまでの平均時間です。立ち上がり時間は、アイ振幅の 10% ~ 90% から計算されます。

アイ幅 (EyeWidth)

"アイ幅" は、平均アイ クロッシング時間から標準偏差の 3 倍分 (3σ) だけアイの中心方向に移動した 2 点間の水平距離です。"アイ幅" の値の測定単位は秒です。

水平方向のアイ開口率 (EyeOpeningHor)

"水平方向のアイ開口率" は、アイ測定設定オブジェクトの BERThreshold プロパティによって定義される BER 値に対応する水平ヒストグラム上の 2 点間の水平距離です。測定値は、アイ測定設定オブジェクトの ReferenceAmplitude プロパティによって定義される振幅値で取得されます。これは、ランダムな要素と確定的な要素を考慮したうえで、デュアルディラック モデルにより計算されます [5] (デュアルディラックの節を参照)。

アイの開口測定値の一般的な BER 値は 10-12 です。これは、ほぼ 7σ 点に相当します (ガウス分布を想定)。

ピーク間ジッター (JitterP2P)

"ピーク間ジッター" は、ヒストグラムの極端なデータ点間の距離です。

ランダム ジッター (JitterRandom)

"ランダム ジッター" は、ジッターの境界のないガウス成分として定義されます。これは analyze メソッドにより、デュアルディラック法で推定されるテールの標準偏差を使用して以下のように計算されます [5]。

RJ = (QL + QR) * σ

ここで

QL=2*erfc1(2*BERρL)

QR=2*erfc1(2*BERρR)

BER はランダム ジッターが計算されるビット エラー レートです。これは、アイ測定設定オブジェクトの BERThreshold プロパティで定義されます。

RMS ジッター (JitterRMS)

"RMS ジッター" は、水平ヒストグラムから計算されるジッターの標準偏差です。

総ジッター (JitterTotal)

"総ジッター" は、ランダム ジッターと確定的ジッターの和です [5]。

参照

[1] Nelson Ou, et al, Models for the Design and Test of Gbps-Speed Serial Interconnects,IEEE Design & Test of Computers, pp. 302-313, July-August 2004.

[2] HP E4543A Q Factor and Eye Contours Application Software, Operating Manual, http://agilent.com

[3] Agilent 71501D Eye-Diagram Analysis, User’s Guide, http://www.agilent.com

[4] 4] Guy Foster, Measurement Brief: Examining Sampling Scope Jitter Histograms, White Paper, SyntheSys Research, Inc., July 2005.

[5] Jitter Analysis: The dual-Dirac Model, RJ/DJ, and Q-Scale, White Paper, Agilent Technologies, December 2004, http://www.agilent.com

参考