Main Content

このページの内容は最新ではありません。最新版の英語を参照するには、ここをクリックします。

Memoryless Nonlinearity

複素ベースバンド信号への増幅器モデルの適用

  • Memoryless Nonlinearity block

ライブラリ:
Communications Toolbox / RF Impairments and Components

説明

Memoryless Nonlinearity ブロックは、増幅器モデルを複素ベースバンド信号に適用します。このブロックを使用して、無線周波数 (RF) 送信機または無線周波数受信機の信号増幅によって発生する無記憶非線形劣化をモデル化します。詳細については、増幅器モデル メソッドを参照してください。

すべて展開する

この例では、Saleh メソッドによる無記憶非線形性を 16-QAM 変調信号に適用します。パワー アンプの Saleh モデルを示すために、この例では、現代の無線機では一般的ではない誇張されたレベルを適用しています。

この例では、cm_mnl_saleh_16qam モデル 16-QAM は、コンスタレーション点の完全なセットを含む信号を変調し、それらを既定の AM/AM および AM/PM 歪み設定、AM/AM 歪みのみ、および AM/PM 歪みのみで Saleh メソッドを適用するように構成されたMemoryless Nonlinearityブロックに渡します。モデルの各 Memoryless Nonlinearity ブロックの後にはConstellation Diagramブロックが含まれているため、コンスタレーションに対する各劣化要因の影響を解析できます。

モデル内で、"Plot Transfer Curve" Callback Button (Simulink)ブロックをクリックして、補助関数 testPA.m を実行できます。補助関数 testPA は、以下に示す Saleh メソッドの増幅器の転送曲線を既定の設定でプロットし、非線形の入出力信号を表示します。増幅後、プロットされたコンスタレーション点は、増幅器モデルの入力から出力への特性に従って移動されます。各コンスタレーション点の電圧により、コンスタレーションの各点の歪みの方向と振幅が決まります。

このコンスタレーション ダイアグラムには、振幅と位相が個別および一緒に歪むように設定された増幅器に対するコンスタレーションの歪みが示されています。

  • AMAM ダイアグラムには振幅対振幅の歪みがある信号が示され、振幅対位相の歪みは示されません。AM/AM 歪みによって、コンスタレーション点が原点から放射状に、または原点に向かって移動します。Saleh メソッドおよび指定した動作特性の場合、内側のコーナーのコンスタレーション点は原点から離れて移動し、外側のコーナーのコンスタレーション点は原点に向かって移動します。コーナー以外のコンスタレーション点はごくわずかな量だけ移動します。

  • AMPM ダイアグラムには振幅対振幅の歪みがある信号は示され、振幅対位相の歪みは示されません。AM/PM 歪みにより、コンスタレーション点の回転が発生します。原点から離れているコンスタレーション点は原点に近い点よりも大きく移動します。

  • AMAM and AMPM ダイアグラムには振幅対振幅の歪みと振幅対位相の歪みがある信号が示されます。このダイアグラムでは、コンスタレーション点が原点から離れて、または原点に向かって移動し、反時計回りに回転しています。

このコンスタレーション点の散布図には AM/AM 歪みのみで移動した点が示されます。ここで使用される関数scatterplotは、コンスタレーション点の位置をプロットし、各点が理想的なコンスタレーション点の位置から移動した相対距離を強調表示するラベルを付けます。移動した各コンスタレーション点の振幅と方向を解析するには、現在の動作特性に対して、入力および出力の特性曲線を再プロットする必要があります。

モデルを調査するには、Memoryless Nonlinearity ブロックの設定を次のように調整してみます。

  • さまざまな劣化要因モデル メソッドを適用する。

  • さまざまな劣化のレベルを適用する。

  • 補助関数 testPA.m を更新して、既定以外の Memoryless Nonlinearity ブロック設定で入出力特性をプロットし、解析する。

この例では、差動直交位相偏移変調 (DQPSK) 方式によって変調された信号に RF 劣化要因を適用します。RF 劣化要因を示すために、この例では、現代の無線機の一般的なレベルとは異なる誇張されたレベルを適用しています。

この例では、slex_rcvrimpairments_dqpsk モデルがランダムな信号を DQPSK 変調し、信号にさまざまな RF 劣化要因を適用します。モデルでは、RF Impairments ライブラリから劣化要因ブロックを使用します。コールバック関数 InitFun はシミュレーション変数を初期化します。詳細については、モデル コールバック (Simulink)を参照してください。

劣化要因ブロックの後、信号は 2 つのパスに分岐します。1 つのパスは、復調の前に信号に DC ブロッキング、自動ゲイン制御 (AGC)、および I/Q 不均衡補正を適用します。補正パス上の信号は、DC BlockerAGC、およびI/Q Imbalance Compensatorブロックによって調整されます。信号は DQPSK 変調されているため、搬送波同期は必要ありません。2 番目のパスは、復調に直接進みます。復調後、両方の信号でエラー レートの計算が行われます。モデルには、コンスタレーションを解析できるように、変調の後、補正の前、および補正の後にConstellation Diagramブロックが含まれています。

モデルが実行されると、シミュレーションの以下の段階で信号がコンスタレーション ダイアグラムにプロットされます。

  • After Modulation コンスタレーション ダイアグラムは、基準の DQPSK 変調信号コンスタレーションを示しています。

  • Before Correction コンスタレーション ダイアグラムは、減衰して歪んだ信号コンスタレーションを示しています。

  • After Correction コンスタレーション ダイアグラムは、補正ブロック後に信号が増幅および改善されたことを示しています。

AGC を使用しない復調済み信号のエラー レートは主に自由空間パス損失と I/Q 不均衡によって発生します。QPSK 変調は他の劣化要因の影響を最小限に抑えます。

Error rate for corrected signal:   0.000
Error rate for uncorrected signal: 0.042

モデルを検証するには、次のことを試します。

  • RF 劣化要因の設定を調整し、モデルを再実行して、コンスタレーション ダイアグラムとエラー レートの変化に注目します。

  • 復調の前にイコライザー段階を追加するためにモデルを変更します。イコライズには、劣化要因によって発生する歪みの一部を低減するための固有の機能があります。詳細については、イコライズを参照してください。

端子

入力

すべて展開する

入力 RF ベースバンド信号。スカラーまたは列ベクトルとして指定します。

データ型: double | single
複素数のサポート: あり

出力

すべて展開する

出力 RF ベースバンド信号。スカラーまたは列ベクトルとして返されます。出力のデータ型は入力のデータ型と同じです。

パラメーター

すべて展開する

ブロック パラメーターを対話的に編集するには、プロパティ インスペクターを使用します。Simulink® ツールストリップの [シミュレーション] タブの [準備] ギャラリーで [プロパティ インスペクター] を選択します。

[メイン] タブ

増幅器の非線形性モデルを次のいずれかの方法で指定します。

  • Cubic polynomial

  • AM/AM - AM/PM

  • Modified Rapp

  • Saleh

詳細については、増幅器モデル メソッドを参照してください。

線形ゲイン。スカラーとして dB 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Cubic polynomial] または [Modified Rapp] に設定します。

3 次非線形性タイプ (dBm 単位)。次のいずれかのオプションとして指定します。

  • IIP3 — 3 次入力インターセプト ポイント

  • OIP3 — 3 次出力インターセプト ポイント

  • IP1dB — 1 dB の入力圧縮点

  • OP1dB — 1 dB の出力圧縮点

  • IPsat — 入力の飽和点

  • OPsat — 出力の飽和点

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][3 次多項式] に設定します。

3 次入力インターセプト ポイント。実数の正の数値として dBm 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][3 次多項式] に、[Type of Non-Linearity][IIP3] に設定します。

3 次出力インターセプト ポイント。実数の正の数値として dBm 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][3 次多項式] に、[Type of Non-Linearity][OIP3] に設定します。

1 dB の入力圧縮点。実数の正の数値として dBm 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][3 次多項式] に、[Type of Non-Linearity][IP1dB] に設定します。

1 dB の出力圧縮点。実数の正の数値として dBm 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][3 次多項式] に、[Type of Non-Linearity][OP1dB] に設定します。

入力の飽和点。実数の正の数値として dBm 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][3 次多項式] に、[Type of Non-Linearity][IPsat] に設定します。

出力の飽和点。実数の正の数値として dBm 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][3 次多項式] に、[Type of Non-Linearity][OPsat] に設定します。

テーブル ルックアップ エントリ。実数の M 行 3 列の行列として指定します。このテーブルは、AM/AM-AM/PM モデル メソッドに対する行列の列 1 の入力信号パワーの絶対値を基準とし、モデルの出力パワーを dBm レベルで行列の列 2 に、モデルの位相変化を度単位で行列の列 3 に表します。列 1 の入力パワーは単調増加でなければなりません。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][AM/AM - AM/PM] に設定します。

電圧出力の飽和レベル。実数の正の数値として dBm 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Modified Rapp] に設定します。

Modified Rapp モデル メソッドの AM/AM 計算に対する振幅の平滑度係数。正の実数として指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Modified Rapp] に設定します。

Modified Rapp モデル メソッドの AM/PM 計算に対する位相ゲイン。実数のスカラーとしてラジアン単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Modified Rapp] に設定します。

Modified Rapp モデル メソッドの AM/PM 計算に対する位相の飽和。正の実数として指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Modified Rapp] に設定します。

Modified Rapp モデル メソッドの AM/PM 計算に対する位相の平滑度。正の実数として指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Modified Rapp] に設定します。

Saleh モデル メソッドの入力信号レベルに対するスケーリング係数。非負の実数として dB 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Saleh] に設定します。

Saleh モデル メソッドに対する AM/AM の 2 タプル変換パラメーター。非負の実数の 2 要素ベクトルとして指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Saleh] に設定します。

Saleh モデル メソッドに対する AM/PM の 2 タプル変換パラメーター。非負の実数の 2 要素ベクトルとして指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Saleh] に設定します。

Saleh モデル メソッドの出力信号レベルに対するスケーリング係数。非負の実数として dB 単位で指定します。

依存関係

このパラメーターを有効にするには、[モデル][Saleh] に設定します。

オーム単位の参照負荷の値。正のスカラーとして指定します。この値を使用して、電圧レベルと信号およびノイズ パワー レベルの間の変換を行います。

調整可能: Yes

このボタンは [モデル] タブで指定されたパラメーターに基づいて、パワーの特性をプロットします。

詳細については、ヒントを参照してください。

実行するシミュレーションのタイプ。[コード生成] または [インタープリター型実行] として指定します。

  • コード生成 — 生成された C コードを使用してモデルをシミュレートします。シミュレーションの初回実行時、Simulink は対象ブロックの C コードを生成します。このモデルは、モデルが変更されない限り以降のシミュレーションで C コードを再利用します。このオプションを使用すると、シミュレーションの起動時間は長くなりますが、以降のシミュレーションの速度は [インタープリター型実行] オプションを使用した場合よりも速くなります。

  • インタープリター型実行 — MATLAB® インタープリターを使用してモデルをシミュレートします。このオプションを使用すると、起動時間が短縮されますが、以降のシミュレーションの速度は [コード生成] オプションを使用した場合よりも遅くなります。このモードで、ブロックのソース コードをデバッグできます。

詳細については、シミュレーション モード (Simulink)を参照してください。

ブロックの特性

データ型

double | single

多次元信号

なし

可変サイズの信号

あり

詳細

すべて展開する

ヒント

  • モデルのパワー特性を可視化するには、次の表に示すパラメーターを設定し、[パワー特性のプロット] ボタンをクリックします。

    モデルパラメーターおよび値の例パワー特性のプロット
    3 次多項式

    [メイン] タブ:

    • 線形パワー ゲイン (dB): 7

    • 非線形性のタイプ: IIP3

    • IIP3 (dBm): 33

    • シミュレーション実行方法: コード生成

    Cubic polynomial power characteristics plot

    AM/AM - AM/PM

    [メイン] タブ:

    • ルックアップ テーブル (Pin(dBm), Pout(dBm), deg): [-25, 5, -1; -10, 20, -2; 0, 27, 5; 5, 28, 12]

    • シミュレーション実行方法: コード生成

    AM/AM - AM/PM power characteristics plot

    Modified Rapp

    [メイン] タブ:

    • 線形パワー ゲイン (dB): 7

    • 出力の飽和レベル (V): 1

    • 振幅の平滑度係数: 2

    • 位相ゲイン (rad): -0.45

    • 位相の飽和: 0.88

    • 位相の平滑度係数: 3.43

    • シミュレーション実行方法: コード生成

    Rapp AM/AM power characteristics plot

    Saleh

    [メイン] タブ:

    • 入力スケーリング (dB): 0

    • AM/AM パラメーター [alpha beta]: [2.1587, 1.1517]

    • AM/PM パラメーター [alpha beta]: [4.0033, 9.1040]

    • 出力スケーリング (dB): 0

    • シミュレーション実行方法: インタープリター型実行

    Saleh AM/AM power characteristics plot

参照

[1] Saleh, A.A.M. “Frequency-Independent and Frequency-Dependent Nonlinear Models of TWT Amplifiers.” IEEE Transactions on Communications 29, no. 11 (November 1981): 1715–20. https://doi.org/10.1109/TCOM.1981.1094911.

[2] Ghorbani, A., and M. Sheikhan. "The Effect of Solid State Power Amplifiers (SSPAs) Nonlinearities on MPSK and M-QAM Signal Transmission." In 1991 Sixth International Conference on Digital Processing of Signals in Communications, 193–97, 1991.

[3] Rapp, Ch. "Effects of HPA-Nonlinearity on a 4-DPSK/OFDM-Signal for a Digital Sound Broadcasting System." In Proceedings Second European Conf. on Sat. Comm. (ESA SP-332), 179–84. Liege, Belgium, 1991. https://elib.dlr.de/33776/.

[4] Kundert, Ken."Accurate and Rapid Measurement of IP2 and IP3," The Designer Guide Community, May 22, 2002.

拡張機能

C/C++ コード生成
Simulink® Coder™ を使用して C および C++ コードを生成します。

バージョン履歴

R2006a より前に導入

すべて展開する

参考

ブロック

オブジェクト