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Simscape Electrical Specialized Power Systems モデルの作成とカスタマイズ

はじめに

Simscape™ Electrical™ Specialized Power Systems では、多様なモデルを提供しています。しかし、独自のモデルを、Simscape Electrical Specialized Power Systems ライブラリで提供されている標準モデルと接続するインターフェイスが必要になることがあります。このモデルは、アークやバリスター、可飽和インダクタ、あるいは新しいタイプのモーターなどをシミュレーションする簡単な非線形抵抗にすることができます。

次の各節では、簡単な可飽和インダクタンスと非線形抵抗を例として使用します。

非線形インダクタンスのモデル作成

定格電圧 Vnom = 120V RMS、定格周波数 fnom = 60Hz で動作する 2H (ヘンリー) のインダクタを考えます。ゼロから 120V RMSまで、インダクタのインダクタンスは L = 2H で一定で、電圧が定格電圧を超えると飽和し、インダクタンスは Lsat = 0.5H まで低下します。非線形の電流 - 磁束特性は次の図にプロットされています。磁束と電流のスケールは PU 単位で表示されています。定格電圧と定格電流は、PU 単位系で基準値を示しています。

非線形インダクタンスの電流-磁束特性

このインダクタを流れる電流 i は磁束鎖交数Ψの非線形関数です。言い換えると、端子間電圧 v の関数になります。これらの関係は次の式で与えられます。

v=Ldidt=dψdt   or   ψ=vdti=ψL(ψ)

そのため、非線形インダクタンスのモデルは、次に示すように、電流 i が電圧 v の非線形関数となるよう制御された電流源として使うことができます。

非線形インダクタンス モデル

非線形インダクタンスの実装に 2H の非線形インダクタンスを適用した回路を示します。非線形インダクタンスは、2 つの電圧源 (120 V RMS、60Hz の AC Voltage Source ブロックと DC Voltage Source ブロック) と 5 Ω の抵抗に直列に接続されています。

この非線形モデルを構築するために使われるすべての素子は、Nonlinear Inductance としてサブシステムにグループ化され、そのインダクタの端子には、InOut のラベルが付けられます。磁束を返す Simulink® 出力がサブシステムに追加されています。この出力を Scope ブロックに接続することにより、磁束を観測できます。

この非線形モデルでは、インダクタンス端子の電圧を読み取る Voltage Measurement ブロックと、Controlled Current Source ブロックを使用しています。電流源の矢印の方向は、上図に示したモデルのとおり、入力から出力への方向を示しています。

Integrator ブロックは電圧入力から磁束を計算し、1-D Lookup Table ブロックは非線形インダクタンスの電流-磁束特性で説明されている飽和特性 i = f(ψ) を実装します。

非線形インダクタンスの実装

[Simscape][Electrical][Specialized Power Systems][Sensors and Measurements] ライブラリの 2 つの Fourier ブロックは、電流の基本成分と DC 成分を解析するために使用されます。

Simscape Electrical Specialized Power Systems ライブラリと Simulink ライブラリのブロックを使って、上図に示した回路を作成します。"i =f(ψ)" の関係を実装するために、1-D Lookup Table ブロックに次のベクトルを設定します。

Breakpoints 1 (flux)

[-1.25 -1 1 1.25 ] *(120*sqrt(2)/(2*pi*60))

Table data (current)

[-2 -1 1 2 ] *(120*sqrt(2)/(4*pi*60))

次に 2 つの電源に対し、次のようにパラメーターを設定します。

AC 電源

Peak amplitude

120*sqrt(2)

Phase

90 degrees

Frequency

60 Hz

DC 電源

Amplitude

0 V

シミュレーション時間を 1.5 s に調整し、既定のパラメーターを使って、積分アルゴリズム ode23tb を選択します。シミュレーションを開始します。

予想されるとおり、電流と磁束は正弦波となり、そのピーク値は次のような定格値に一致します。

Peak Current=120222π60=0.225 A

Peak Flux=12022π60=0.450 Vs

DC電圧を 1V にしてもう一度シミュレーションを実行してください。電流が歪むことが観測されます。これは、1V の DC 電圧の条件で積分すると、磁束が電流-磁束特性の非線形領域 (ψ > 0.450V.s) に入り、磁束のオフセットを生じたためです。磁束が飽和した結果、電流に高調波成分を含むためです。シミュレーション結果の最後の 3 サイクルを拡大してみてください。電流のピーク値は 0.70 A に達し、基本成分は 0.368 A まで増加しています。予想されるとおり、電流の DC 成分は 1 V/ 0.5 Ω = 0.2 です。

以下のプロンプト、変数および値を指定するように、マスク設定をすることができます。

Nominal voltage (Volts rms):

Vnom

120

Nominal frequency (Hz):

fnom

60

Unsaturated inductance (H):

L

2

Saturation characteristic [i1(pu) phi1(pu); i2 phi2; ...]:

sat

[0, 0; 1, 1; 2, 1.25]

ブロックのマスク設定を初期化する次のコードは、モデルの Look-Up Table ブロックで使用する 2 つのベクトル Current_vectFlux_vect を準備します。

% Define base current and Flux for pu system
I_base = Vnom*sqrt(2)/(L*2*pi*fnom);
Phi_base = Vnom*sqrt(2)/(2*pi*fnom); 

% Check first two points of the saturation characteristic
if ~all(all(sat(1:2,:)==[0 0; 1 1])),
    h=errordlg('The first two points of the characteristic must 
be [0 0; 1 1]','Error');
    uiwait(h);
end 

% Complete negative part of saturation characteristic
[npoints,ncol]=size(sat);
sat1=[sat ; -sat(2:npoints,:)];
sat1=sort(sat1); 

% Current vector (A)  and flux vector (V.s)
Current_vect=sat1(:,1)*I_base;
Flux_vect=sat1(:,2)*Phi_base;

飽和特性は第 1 象限にだけ定義されるので、コマンド コードの 3 行分は飽和特性の負の特性を加えて完結した定義を与えるものです。どのように飽和特性の最初の領域の妥当性が検証されるかにも注意してください。最初の領域が、1pu のインダクタンス (基準値) が指定されている 2 つの点 [0 0; 1 1] で定義されていなければなりません。

非線形抵抗のモデル作成

非線形抵抗のモデル作成は、既に行ってきた非線形インダクタンスに適用したモデル作成と同じように行うことができます。

次のような V-I 特性をもつ金属酸化物バリスター (MOV) は良い例です。

i=I0(vV0)α

ここで、

v, i =

瞬時電圧および瞬時電流

Vo =

保護電圧

Io =

保護電圧の指令電流

α =

非線形特性を定義するべき指数 (通常 10 と 50 の間)

次の図は、120kV で素子を保護する MOV をシミュレーションする非線形抵抗の応用例を示します。回路を単純化するために、1 相分の回路だけを示します。

120kV 回路に適用された非線形抵抗

このモデルは power_nonlinearresistor の例で使用できます。

このモデルは非線形インダクタンス モデルの場合とは異なり、Look-Up Table ブロックを使用していません。電流を電圧の関数で表す解析的表現が知られているため、非線形の "I(V)" 特性は、Simulink ライブラリの Fcn ブロックを使用して直接実装されます。

この純粋な抵抗モデルは、何の状態値ももちません。結果として、回路を状態空間で表現すると、中に代数ループができてしまいます。

代数ループのシミュレーションには、しばしば時間がかかります。非線形特性を変更しないブロックを使って、ループを切断する必要があります。ここで、ファスト タイム定数 (T = 0.01 µs) を使って 1 次の伝達関数 H(s) = 1/(1+Ts) がシステムに導入されます。

ユーザー モデルと他の非線形ブロックとの接続

電流源として実装した非線形モデルは、インダクタ、他の電流源、あるいは開回路と直列に接続することはできません。そのような回路トポロジは Simscape Electrical Specialized Power Systems のエラーの原因になります。

同様に、非線形モデルが Controlled Voltage Source ブロックを使用する場合、このモデルが短絡されたり、コンデンサに接続されることはありません。

たとえば、power_nonlinearresistor モデル例の電圧源から電圧を印加したときの非線形抵抗の突入電流を調べる場合を考えます。

エラーが生じる回路構成

この回路のシミュレーションを実行すると、次のようなエラー メッセージが表示されます。

この回路構成は、電流源によってシミュレートされる 2 つの非線形素子が直列に接続されているために禁じられています (Breaker ブロックと Nonlinear Inductance ブロック)。このような回路をシミュレーションするには、2 つの非線形ブロックの内の 1 つを迂回する電流パスを設けなければなりません。たとえば、1 MΩ のような大きな抵抗を Breaker ブロックか Inductance ブロックの両端に接続します。この場合、直列の RC スナバ回路を含むモデルが既に用意されているため、Breaker ブロックを選択する方が簡単です。

メモ:

純粋に抵抗インピーダンスの代わりにインダクティブな R-L 直列回路のインピーダンスを使用すると、別のエラー メッセージが表示されることがあります。その理由は、非線形インダクタンスのモデルを作成する際に使った電流源が、1 つのインダクタンスと、さらにブレーカーの両端で抵抗性のスナバとも直列に接続されることになるからです。そのような場合には、電源インピーダンスの両端に並列に抵抗性スナバを、あるいは、ブレーカー端子と電源のニュートラル端子との間に大きな分流抵抗を追加することで問題を回避できます。