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熱流体モデリングのフレームワーク

ブロックによるコンポーネントの表現

熱流体モデルは有限体積法に基づいています。この方法は、熱流体システムを共有のインターフェイスを通じて相互作用する複数の検査体積に離散化します。原油のパイプライン システムはひとつの例です。このシステムは、パイプラインの長さに沿って直列につながれた一連のパイプラインのセグメントとしてモデル化できます。

パイプライン システムの離散化

検査体積は、原油のパイプラインなどの熱流体コンポーネントか、パイプラインのセグメントなどのコンポーネントの一部を表現できます。熱流体システムとそのコンポーネントは、シミュレーションの精度を向上させる場合などに必要に応じて細かく離散化できます。ただし、離散化を細かく行うとモデルの複雑度も上がるため、シミュレーションの速度が低下します。

熱流体ブロックは、内部ノードを使用してコンポーネントの検査体積を表現します。このノードは、コンポーネント内部の流体の圧力と温度を与えます。このノードは表示されませんが、Simscape™ データ ログを使用してパラメーターと変数にアクセスできます。詳細は、シミュレーション データ ログについてを参照してください。

Pipe (TL) ブロックの Simscape ノード

検査体積の内部ノードでは、流体の圧力と温度の動的な変化は 2 つの物理的原理に従います。これらの原理とは、質量保存の法則とエネルギー保存の法則です。内部ノードの周囲にある検査体積の圧力と温度が計算されます。この検査体積は、ブロックが表現する熱流体コンポーネントの総体積です。

2 番目のノードのセットは、隣のノードと相互に作用可能な有限体積に通じるインターフェイスを表現します。これらのノードは Simscape 保存端子として表示され、この中では熱流体保存端子が最も重要です。隣接する流体の体積間で質量、運動量、エネルギーの交換を許可することで、熱流体保存端子は定常状態となりがちな有限体積の動的な変化を制御します。

端子によるインターフェイスの表現

熱流体保存端子は、この端子が表現するインターフェイスで流体の圧力と温度を与えます。また、質量と熱の流量も与えることで、熱流体コンポーネント間の相互作用が制御されます。圧力と温度は Thermal Liquid ドメインのアクロス変数、流量はスルー変数です。

熱流体保存端子を通じた質量と熱の流量は、2 つの物理的原理に従います。これらの原理とは、運動量保存の法則とエネルギー保存の法則です。端子における質量流量は運動量保存の法則から計算されます。端子における熱流量は熱エネルギー保存の法則から計算されます。

流量の計算は熱流体コンポーネントの検査体積の半分に対して実行されます。この検査体積の半分は、一方の境界は端子が表現するインターフェイス、もう一方の境界は検査体積の重心を通る平行面となっています。

次の図は、パイプラインのセグメントのインターフェイス A における、流量計算のための検査体積の半分を示しています。インターフェイス A は Pipe (TL) ブロックの熱流体保存端子 A に対応しています。ノード C はブロックの内部ノードに対応し、検査体積の重心と一致しています。

流量計算のための検査体積の半分

完全な流束スキーム

Thermal Liquid ライブラリのブロックは完全な流束スキームを実装します。このスキームを使用して、熱流束保存端子を通じた最終的な熱流束は、対流と伝導による流束の両方を含んでいます。流れの方向の熱伝導を含めることで、熱流体ブロックはこのブロックが表現する物理システムのより現実的なシミュレーションを提供します。

完全な流束スキームを使用するその他の利点としては、熱流体モデルのシミュレーションのロバスト性が拡張されていることがあげられます。このロバスト性は熱伝導による流束が主なモデルで重要になります。例には質量流量が低い場合と逆流が発生する場合が含められており、これらの状態では対流による流束はごくわずかになるか、完全に消滅します。

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