Dual Active Bridge

Dual Active Bridge とは?

Dual Active Bridge (DAB) は、双方向の電力フローとガルバニック絶縁を提供する DC-DC コンバーターです。バッテリーシステム、再生可能エネルギー、半導体変圧器、および低電圧から中電圧の電力網アプリケーションへの使用が想定されています。電圧や電力の要件に対して柔軟性の高い設計特性を備え、ソフトスイッチングも可能です。適応性の高い設計によって、目的の動作範囲で 98% を超える効率を達成できます。高電圧用にスタックしたり、AC 機能を提供するように変更したり、電力フローの増加や高調波の改善のために並列接続したりすることができます。

Dual Active Bridge は、高周波変圧器とインダクターで分離された 2 つのフルブリッジで構成されています。制御手法に応じて、DC ブロッキング コンデンサを含めることもできます。以下の概略図は、単相 DAB のレイアウトを示しています。

単相 Dual Active Bridge 回路の概略図。2 つのフルブリッジがインダクターと高周波変圧器で接続されています。

図 1. 単相 Dual Active Bridge。

Dual Active Bridge のデバイスの数は、位相変調制御の手法と相まって、デジタル制御に適しています。Dual Active Bridge の設計には、デジタル制御設計と高品質な電気回路シミュレーションを組み合わせる必要があります。Simulink® と Simscape Electrical™ を使用すれば、Dual Active Bridge の制御アルゴリズムと電気回路をモデル化してシミュレーションできます。リアルタイムシミュレーションや量産実装用のコードをモデルから生成できます。これにより、モデルベースデザインを Dual Active Bridge 設計のあらゆる側面に適用できるようになります。

モデル化とシミュレーション

Simscape Electrical提供されている例を使用して、Dual Active Bridge のシミュレーションをすぐに開始できます。Simscape Electrical には、熱やスイッチング損失を考慮した異なる詳細度の能動素子や受動素子が用意されています。

Dual Active Bridge の Simscape Electrical のモデル例を示した Simulink のスクリーンショット。

図 2. Dual Active Bridge の Simscape Electrical のモデル例。

制御設計

Simulink では、単相と三相の両方の Dual Active Bridge 用の制御アルゴリズムを開発できます。DAB モデルを使用して制御アルゴリズムをシミュレーションすることで、コントローラーのパラメーターを調整し、設計要件に合わせて最適な性能を達成することができます。台形波変調や三角波変調などの複数の制御手法が存在しますが、最も一般的なのは単相シフト変調であり、これについてはこのページの最後の変調セクションで説明します。

組み込みコード生成

DAB 制御アルゴリズムで満足のいく結果が得られたら、Simulink モデルから C または HDL コードを生成できます。生成されたコードは、マイクロ コントローラー、システムオンチップ (SoC)、および FPGA に展開することができ、特定のサプライヤーのハードウェア向けに最適化するオプションが用意されています。

DAB の変調方式チュートリアル

Dual Active Bridge を制御および操作する最も一般的な手法は、単相の変調方式を使用することです。制御は、相互に位相をずらした 2 つの PWM 信号を 50% のデューティ比で生成することによって実現されます。位相差が大きいほど、コンバーターを通過する電力フローが大きくなります。図 3 では、左側が最初の PWM 信号とその補完信号によって制御され、右側が 2 番目の PWM 信号とその補完信号によって制御されます。これにより、インダクターの両端で 4 つの電圧の組み合わせが可能になります。正および負の電源電圧が片側にあり、正または負の参照負荷電圧がもう片側にあります。これらの 4 つのモードは位相角の単一の制御変数で実現されています。これは、8 つのゲートパルスすべてを生成するのに十分です。より高度な制御方式では、制御変数の数を増やして、動作と効率を向上させます (ソフトスイッチングの最大化)。

DAB の変調方式の基本動作を以下のアニメーションで示します。この図に示されている各動作モードについて以下で説明します。

図 3. 正の電力フローでの Dual Active Bridge の単相動作。

インダクターの上の紫色の線は、インダクター電流のプロットです。インダクターの下の 2 つの矩形波は 2 つの PWM 信号です。この例では、各モードをわかりやすく可視化するために、誇張して 45 度の正の位相シフトを使用しています。振幅の大きい緑色の矩形波は左側のフルブリッジを制御し、振幅の小さい青色の矩形波は右側のフルブリッジを制御します。変圧器の両端で参照される負荷電圧は、電源電圧より 20% 低くなります。逆潮流は、負の位相シフトを使用して実現されます。

動作モード

このセクションでは、図を使用して、4 つの主要な動作モードについて検討します

インダクター電流、インダクター電圧、および両側のフルブリッジを駆動するデューティ比のプロット。点線により、インダクターの両端でとりうる 4 つの電圧ごとに動作モードを分けています。

図 4. 単相 Dual Active Bridge の動作モード。

図 4 では、電力フローは主にモード A と C で実現されます。B と D は、高周波変圧器を介して送電する AC 信号を生成するために必要です。結果として、循環電流が発生します。これは設計や制御手法によって可能な限り最小限にする必要があります。


ソフトウェア リファレンス

参考: パワー エレクトロニクス シミュレーション, Simulink による DC-DC コンバーターのデジタル制御設計, Simscape Electrical, 昇圧コンバーター シミュレーション