ドローンマッピング

ドローンマッピングとは?

ドローンマッピングは、ドローンや無人航空機 (UAV) に搭載されたセンサーからのデータを用いて、対象地域の 2D マップおよび 3D マップを作成するリモートセンシング技術です。

結果として得られる地図は、通常、各データ点の実世界における具体的な位置座標が記載された地理空間地図になります。埋め込まれた地図データにより、土地測量、建設、農業、都市計画などの用途で実際の土地を計測できます。

MATLAB で表現したドローンマッピング。

ドローンマッピングには 3 つの構成要素が必要です。

  1. ドローンまたは UAV: ドローンは、手動で操縦できるほか、調査対象地域の上空を自律飛行することもできます。
    1. ドローンを手動で操縦する場合は、MAVlink などの通信プロトコルを使用したリモート コントローラー経由で地上局から制御します。
    2. 自律型ドローンは、パイロットがいなくても自律操縦で調査対象地域の上空を飛行し、ドローンマッピング用のデータを収集することが可能です。
  2. ドローンセンサー: ドローンマッピング用のドローンに搭載されるセンサーは、カメラと LiDAR センサーの組み合わせが一般的です。
    1. カメラは、画像が重なるように連続撮影します。よく使われるカメラは次のとおりです。
      1. 可視画像カメラ。RGB で表現される (可視光線スペクトルから) 可視画像を取得できる一般的なカメラです。ドローンマッピングに最もよく使われるカメラです。
      2. スペクトル イメージング カメラ。可視光線と不可視光線のスペクトルから画像を取得します。画像は 3 ~ 15 帯域のマルチスペクトル画像、または多数の帯域をデータキューブとして表現したハイパースペクトル画像です。
    2. LiDAR センサーは、LiDAR (光検出と測距) を使用して点群データを取得します。
  3. マッピング (地図作成) ソフトウェア: ドローン マッピング ソフトウェアは、センサーから収集したデータを処理し、連続したデータから特徴を抽出および照合して繋ぎ合わせ、対象地域の 3D マップを作成します。センサーの種類をもとに、代表的なドローンマッピングの手法を 2 つご紹介します。
    1. フォトグラメトリー (写真測量法): カメラを使用したドローンマッピングでは、撮影した画像を重なり合う領域で繋ぎ合わせ、対象地域の 3D モデルを作成できます。この手法をフォトグラメトリーといいます。MATLAB®Computer Vision Toolbox™ を使用することで、フォトグラメトリーを実装できます。
    2. フォトグラメトリーは、カメラが広く普及しているため、費用もかからず手軽です。ただし、カメラデータから抽出した特徴の可視性に大きく依存しています。可視性は、ドローンの巡航高度や暗さ、雲、霧などの環境の影響を受けます。

    3. LiDAR マッピング: LiDAR によるドローンマッピングでは、航空機 LiDAR マッピングを使用して 3D マップを作成できます。この手法では、重なり合った LiDAR 点群から共通の特徴を検出し、その特徴を利用して点群を繋ぎ合わせ、3D マップを作成します。MATLAB で使用できる LiDAR Toolbox™ には、LiDAR データから 3D マップを作成するアルゴリズムや関数が用意されています。
    4. LiDAR マッピングの最大のメリットは、環境の可視性にかかわらず利用できることです。LiDAR センサーは植生が密集する場所にも対応できるため、林業分野での利用にも適しています。ただし、LiDAR センサーはカメラに比べて高価で、重くなります。

MATLAB にはシミュレーション環境も用意されており、カメラと LiDAR の合成データを作成して、ドローン マッピング アルゴリズムを実世界に展開する前にテストできます。また、UAV Toolbox を使用して、QGC などの外部の地上局ソフトウェアとの接続や、PX4® などの自動操縦システムとの通信が可能です。

以下のワークフローは、ドローンに搭載されたセンサーから、フォトグラメトリー / LiDAR マッピングを使用して 3D マップを作成する手順を示しています。

ドローンマッピング ワークフローの視覚的表現。手順は、データ収集、データの前処理、マップ生成、姿勢グラフの最適化です。

ドローンマッピングのワークフロー: データ収集後、MATLAB のコンピューター ビジョン、LiDAR、ナビゲーションツールを使用して、前処理、マッピング、姿勢グラフの最適化を行います。

  1. データ収集: ドローンマッピングでは、まず始めに、ドローンに調査対象地域の上空を飛行させ、目的のデータを連続的に収集します。
  2. データの前処理: データを取り込んだら、MATLAB を使用して画像や LiDAR データの前処理を行い、地図生成の準備をします。これには、ノイズの除去ダウンサンプリングなどの手法も含まれます。
  3. マップの生成: 前処理後、データを繋ぎ合わせて対象地域の 3D マップを作成します。この手順では、通常、連続する 2 つのデータ点の重なり部分から抽出した共通の特徴点を使用して、データ点を繋ぎ合わせるための変換を求めます。
  4. 姿勢グラフの最適化: ドローンの軌跡にループ閉じ込みがあれば、姿勢グラフの最適化を実装して、生成される 3D マップの精度を向上させることもできます。

参考: UAV Toolbox, Computer Vision Toolbox, LiDAR Toolbox, ROS Toolbox, Navigation Toolbox, ロボティクス向け MATLAB および Simulink, ロボット プログラミング, SLAM